私に出来る事

「まーた 空見てんのか?」

後ろから声がしたと思ったら突然 ハリーが覗き込む。

「わっ! びっくりした!」

「オマエ 慌てすぎ。ほれ!」

英字新聞の包みを渡され受け取ると、どさっと乱暴にハリーは隣に座った。

「ありがと。わ〜!なんかお洒落だね?」

「面白れーだろ? たかが焼きイモだぜ?」

がぶっといけと言われたので、遠慮なく噛り付く。すごく 熱い!……けど……

「甘〜い!ハリー!すごく美味しいよ!」

「だろ? ちょっと他にはないだろ」

「うん!甘いしホクホクしてるし!今までで一番美味しいよ」

「そーか。ならよかった。これはさ……」

それまで 子供みたいに笑ってたハリーの目が優しくなった。
こんな表情初めて見る気がする。

「オマエには世話になったからな。礼ってとこだ。安い礼だけどな」

「え? 私、ハリーのお世話なんてしてないよ?」

ちょっと考えてみたけれど、やっぱりお礼をされる事なんてやってない。

「文化祭!!」

「文化祭?」

「あの時 オマエが居なかったら俺、もっと荒れてたと思うから…」

「……ハリー」

俯いて呟いたハリーが 大きく伸びをして私を見る。
さっきの表情じゃなく いつものハリー。

「ってな訳だ! ま、どんどん食え!」

「どんどんって そんなに食べないし 食べられないよ!」

そんな事言わずに食え!と紙袋からいくつもの焼きイモを出す。

「無理!絶対無理だから!」

「オマエが食いたいつったんだから食え!」

「限度があるでしょ! いくらなんでも こんなには無理だよ!」

「なら 持って帰れ! これはオマエのもんだ」

渡された紙袋をそっと覗くと 5〜6本は入ってる。
私が 本当に食べると思ったのかな?
なんとなく ハリーらしいけど。

「ありがと。家でちゃんと食べるね」

「おう。んじゃ暗くならないうちに帰るか!オマエん家どこだ?送るわ」

「い〜よ。まだ明るいし ハリーもバスの時間あるでしょ?」

すったもんだのすえ お互いの家の中間地点で決着。
バスに乗り込むハリーを見送る。

「今日はご馳走様でした。ありがとう!」

「いや。礼を言うのはオレの方だ。サンキュ 天音 また明日な!」

「うん! また明日ね!」

遠ざかるバスに手を振って、貰った紙袋をもう一度覗く。

帰ったら みんなで食べよう。
その方が 美味しいし、美奈ちゃんならきっと大喜びだね。

また明日 あらためてハリーにお礼言わなくちゃね?
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