想いを込めて

エスプレッソを淹れる時間がかかって、あまりのんびりとは出来なかった。

「悪いな。無理に連れて来たのに 送ってやれなくて」

「ううん。いいよ そんなの。本当に今日はありがとう。嬉しかった」

「いや。そんなのはいいんだけど。これからはいつでも作るし」

俺が何気なく言った言葉に天音がふわりと笑った。

「本当にありがとう!お店頑張ってね!また 明日!」

俺からのプレゼントを大切そうに抱えて走り出す。
途中何度も振り返り、手を振る姿に苦笑いしながらも手を振り返す。

喜んでもらえたみたいでよかった。
俺が 感じた気持ちぐらい思ってもらえるか分からないけど。

でも あのプレゼント見たらあいつどんな顔したんだろう?
やっぱり 目の前で開けてもらえばよかったかな……

そんな事を思いながら店に入る。
店全体にまだエスプレッソの香りが漂っていて、なんだかさっきまでの時間が流れてるような……余韻が残ってる感じ。

今日は、気持ちよく仕事が出来そうだ。

「やっと、練習の成果が出たみたいだね。よかったじゃないか」

じいちゃんは店に入るなりそうにっこりと笑った。

「別に、いいことじゃないけどさ」

そう言ったけど、あれをいつも見られていたからごまかせられないよな。
あいつには、秘密だけど。

いつもより、気分よく仕事して部屋に戻ると携帯のランプが点滅している。
画面を見ると、あいつからのメール受信。

From:大崎 天音
件名:今日はありがとう。
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佐伯くん、今日は本当にありがとう。
今までで一番嬉しいプレゼントだったよ!
本当は、あのコーヒーの事忘れてると思ってたんだ。
覚えていてくれてびっくりしちゃった。
それから、プレゼント!
すっごく可愛い!
あれって、カピバラだよね?
でも、どうしてネズミなのかが不思議なんだけど?
さっき、写メ撮ったので送ります。
大切にするね!
本当に、ありがとう。おやすみなさい。

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……どうしてって お前に似てたからだよ。
ネズミなのは恥ずかしくて言えないけど。

でも 喜んでくれてよかった。
何度も読み返しながらそう思った。
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