文化祭

「どうしたの?佐伯くん。挙動不振だし、なんか顔赤いよ?」

「なっ? なんでもない!」

「そう?ならいいけど。じゃ 行こうか?」

トレイに2客コーヒーを乗せて 廊下を指差す。

「何処へ?」

「化学準備室。さっき裏で、若王子先生に鍵借りたの。ゆっくり飲みたいなって思って」

歩きだす大崎の手から、トレイを引ったくる。
……なんか危なっかしい。

「ありがと」

「いや。いいけど。よく貸して貰えたな?」

「そうかな? 佐伯くんがお客さんなら、人は入るけど出て行かないから 儲けにはなりませんよ?って言っただけだよ?」

鍵穴に、鍵を差し込みながら話す大崎を後ろから眺める。

……やっぱりこいつ しっかり?
いや……ちゃっかりしてる。

折りたたみのパイプ椅子をガタガタ出していると 大崎は準備室の窓を開けていた。
さすがに 化学室なだけあって、薬品の匂いが気になったんだろう。
せっかくのコーヒーの香りが、だいなしだからな。

「で、1リッチは?」

「冗談だよ!取るわけないでしょ?これは お礼です。ね ね?飲んでみて?」

言われるままに カップを持ち上げると 鼻を抜ける……さっきまでの香りじゃない。

「これ さっきまでの淹れ方じゃないな?お前が淹れた?」

「うん!ちょっと練習しちゃった!どう?」

「うん……上手いよ?俺と比べたらまだまだだけど」

「もう!佐伯くんと比べたらダメだって!」

「これ お客に出した?」

「出してないよ?だって 佐伯くんに飲んでもらおうと思って、練習したんだもん」

思わず噴き出しそうな事を、さらりと平気な顔で言う。
お前……それって、俺の事特別扱いしてるんだぞ?
………いや。大崎だからそれはないか。
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