文化祭

別に見たいものもないし、する事もないから屋上まで上がってのんびりする。
給水塔のタンクの裏側は 人が来ないから時々使ってる。
見上げると青い空。
秋の空は、高くて澄んでいる。

(あ。鳶だ。いいよな。あいつは自由で)

がんじがらめに縛られた、自分にはないもの。
まだ 始まったばかりだと言うのに もう窮屈で息が出来なくて………

(ダメだ。なんかマイナス思考になってる)

もうちょっと後にしようと思ったけど、やっぱあいつ……大崎の顔でも見てこよう。
元気なあいつを見たら、元気になれそうだから。

なんとか 誰にも見つからないように……。

出来るだろうか………。……気合いだな。うん 気合い。出来るだけ早足で……

見つからないうちに教室にたどり着く。
大崎は、若王子と呼び込みをしているのか、仲良く話している。
つーか、若王子の表情がやけに嬉しそうなのが気になる。
……って、教師なんだから有り得ないか。

大崎の顔を見て、ちょっと気が抜けてたから気付かなかった。
あいつらの気配に………

「佐伯くん 発見!一緒に回ろ?」

いつの間にか、両腕をがっつりと掴まれ連行。
それも、両腕二人だけじゃなくて………
知らない間に取り囲まれてる!
いつの間に沸いて出たんだ?こいつら!

あっちのクラスだ、こっちのクラスだと興味もない展示物だのなんだのと引っ張り回され、ようやく開放されたのが十一時を回った頃………

(やば。もう時間ないじゃないか)

あいつ昼までって言ってたよな?
昼って十二時の事か?
きっかりって事か?
なんで はっきりした時間言わないんだ!あいつは!

さりげなく あちこちに視線をさ迷わせながら 女子に気付かれないよう廊下を歩く。
あれだ スパイとかあんな感じだよな。
今度こそ、見つかるわけにはいかない。
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