花屋と彼氏とコーヒーと

その日のバイト中、なんだか佐伯くんは凄く機嫌がよくて。
鼻歌を歌いながら 花を飾っている。

(あ。お花の飾り方センスいい)

じゃなくて!本当にどうしたんだろ……。
テーブルを拭きながら、遠巻きに見守る。
そっと近寄ってきたマスターが、私に耳打ちした。

「今日の瑛は どうかしたんですか?」

「私も よくわからなくて……」

「そうですか……ふむ。何かとてもいい事があったみたいですね」

いつ いい事があったんだろ?
花瓶を持って歩く姿を目で追う。
佐伯くんのお気に入り席を飾り付けてる時、いつもと違うのに気がついた。

「佐伯くん!ディスプレイ替えたんだね?」

「ん? あぁ。ちょっと秋らしくしようと思って」

この間までの 夏って感じもよかったけど、今回のも素敵。

「どう?」

「凄くいい!落ち着いてるし、秋っぽい。でも 海って感じはちゃんとするし。私は大好き!」

ホント 佐伯くんって凄い!興奮して顔を覗き込むと、目を見開いた佐伯くんが 突然のけ反った。
……何?私変な事言った?

「瑛。よかったじゃないか。お嬢さんに褒めてもらえて」

「いっ?」

笑いを堪えたマスターが、佐伯くんの肩を叩いた。
突然しどろもどろになった佐伯くんが、がりがりと頭を掻く。

「別に そんなんじゃないよ。つーか じいちゃん 余計な事言わなくていいから!」

笑い出したマスターの背中を押して、カウンターに座らせた。

「開店まで 時間あるからコーヒー淹れるよ。大崎? お前も座れよ」

「やった! いただきます!」

佐伯くんが淹れるコーヒーは、暖かい感じがして好き。
大喜びでマスターの隣に座る。

本当に今日の佐伯くんは、いつもより雰囲気が柔らかい。
でも 笑ってる佐伯くんの方がいいと思う……よね?
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