花屋と彼氏とコーヒーと

商店街に入ると佐伯くんが足を緩めた。
隣に並んで歩く。

「凄くいい店でさ。細かい事言わなくてもイメージ通りにしてくれるんだよ」

「ふーん。それで何のお店なの?」

「花屋。ここなんだけど」

立ち止まった先にあったのは……
アンネリーというお花屋さん。

(……ここって……だよね?)

呆然と看板を眺めた。
まずい。今日居るとは限らないけど こうも高確率で知り合いに そして学生服の佐伯くんと一緒に居るところを見られるのはまずい。
いや 店の恰好じゃないからいいのかな?
あ!でも配達してるんだから、この店の人は知ってるんだよね?
やっぱり なおさらまずい。

佐伯くんを引き止めようと隣を見ると もう居なかった。

「いらっしゃいませ!まいど!」

「どうも。こんにちは」

「今日は店の方まで?」

「切り花を頂きに。秋っぽいイメージでお願いしたいんですけど」

「秋。ですね! 少々お待ちください!」

「あの……佐伯くん」

服の裾を引っ張った。

「なんだよ」

「私ね? 先にお店に行った方がいいかも」

「あ? なんで?」

「えっと――」

「オーーイ! 有沢!!」

「ああっ!!」

「「うわっ!」」

私の大声に 佐伯くんと店員さんが驚いて声を上げる。
隣にいた 佐伯くんの右手が動いた。

「お前はいったいなんなんだ!」

「いたっ!だって!」

「だってじゃない! 店員さんびっくりしてるだろ!?」

「うっ。ごめんなさい」

「いやいや。大丈夫」

「――真咲くん?呼んだ?」

裏の方から、よく見知った女性が顔をだした。

……出来れば会いたくなかったけど。
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