説明出来ない想い

「これ 読んでていい?」

食い終わった後 大崎が見せたのは恋愛小説。

「はるひちゃんに貸してもらったの。」

「お前って そういうの好きな奴?」

「特別好きってわけじゃないけどね。それにはるひちゃんが よかったって言ってたし。」

そう言うと 本に集中し出す。
何となく手持ちぶさたになった俺は、缶コーヒーを飲みながら木にもたれた。
今日は 日差しもあるし 風も柔らかで気持ちがいい。それに静か。

(やば。眠くなるかも)

そう思うと同時に、隣から声がする。

「寝てもいいよ?時間になったら起こすから。」

「悪いな。頼む。」

せっかくだから 話したい気もするが 邪魔になるのもな。
それに 昨日はちょっと寝不足。
欠伸をひとつして目を閉じた。

「佐伯くん おはよ〜。」

腕を突かれて目を開けた。
体が傾いている。
じゃなくて 俺が大崎にもたれている。

「うわ ごめん!」

慌てて体を起こすと、不思議そうに大崎が首を傾げた。

「いや。肩借りてたみたいだから。」

「別にいいよ?」

「俺 だいぶ寝てた?」

「うん。よく寝てた。」

風も日差しも気持ちいいからねと、空を見上げるから同じように見上げる。
学校で、しかも昼休みだというのに なんだか穏やかな時間。
やっぱり 大崎の傍は心地いい。

「佐伯くん?」

「ん?」

見上げたまま大崎が話す。

「忙しいのはわかるけど、休める時は休まなきゃダメだよ?」

「今 休んだ。」

「それって 屁理屈だよ?」

目を丸くした大崎が 呆れるように俺を見て笑った。

「もう時間?」

「そろそろ予鈴が鳴ると思う。私 先に行くね?」

一緒だとまずいでしょ?と立ち上がる。

「弁当 サンキュな。」

「それは 私の台詞。カレーパン美味しかったよ?ありがと。」

じゃあ 後でね!と手を振り走り出す後ろ姿を見送る。

元気だよな。いつ見ても。

予鈴が鳴るまではいいかと、もう一度木にもたれて空を見上げる。
眠ったお陰なのか、頭も気分もすっきりしていて。
……それだけじゃないとは思うけど。

最近まで 説明出来なかった気持ちは今でもよくわからないけど なんとなくわかった事もある。
きっと もう少し大崎の傍にいたらわかるんだろう………きっと。
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