勘違いの海

天音Side

結局 休憩が終わってからは、ほとんどする事もなく 佐伯くんと一緒に早く上がらせてもらう。
砂浜を散歩しながらの帰り道 切実なお願いをする。

「もう 来年は呼ばないでね?」
「なんで?」
「水着エプロンだよ?恥ずかしいんだよ?」
「海なんだから 普通だろ?」
「それでも嫌です!」
「……まぁ 覚えてたらな。」

しれっと海を見ながら言うので チョップ。

「甘い!」
「いたっ!もう!」
「ははっ 殺気を捨てる事だ。いつでも 来い。」

絶対 いつか仕返ししてやるんだから。
頭を摩りながら佐伯くんを見ると、ちょっと困ったような顔をしている

「……悪かったな。」
「なにが?」
「海だと思っただろ?」
「あぁ… まあね。でも 佐伯くんと違うところで働けて 楽しかったからいいよ?」
「そっか……でも ごめん。」
「ホントにいいよ。こうやって夕方の綺麗な海も見れたし。」

「ね?」と笑うと 佐伯くんも笑ってくれてホッとする。
いろいろあったけど 楽しかったもの。
普段出来ない体験が出来たんだから 佐伯くんには感謝してる。
……水着エプロンは もう嫌だけど。
それに 赤く染まった海は 本当に綺麗。

「なんか 不思議な気分になるんだよね……。」
「ん?」
「夕方の海。懐かしいような 淋しいような……。 ……なんだか泣きたくなる感じ」
「……あぁ。……わかる……気がする。」

何気なく佐伯くんを見ると 何だか泣きそうに笑っている感じがして……。
ほんの一瞬だったけど……。私の見間違い……だったのかな……。
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