勘違いの海

瑛Side

午前中は、慣れない大崎とも会話する余裕があった。

「海が目の前にあるのに〜。」

なんて、ぼやく声に笑ってたけど 昼前くらいから笑えない状況になってくる。
忙しいうえに 大崎が男の客に捕まるからだ。
本人はなぜか ナンパされている事にまったく気付いていない。
厨房にいる俺でも 男の表情を見れば判るのに。

「上がったぞーーー!!」

離れられない俺は 中から呼び戻すしかなくて。

「……佐伯くん。大変だね。」
「いや。別に。」

もう一人の料理担当のバイトに同情される。

(本当は ただの友達なんだから 同情されてもな。……今更 言えないけど。)

「お待たせ〜〜。」
「遅い! 次!」
「は〜〜い。」

俺の機嫌の悪さなど気付く事なく、大崎はせわしなく動いている。
相変わらずのナンパは あいつの天然と 俺の呼びかけと それに同情したらしい みんなの機転で 上手くかわしていて……。
今までになく 店の雰囲気に一体感がある。……大崎以外。

……なんか嫌だ。こんな一体感。

ふと入口に近いテーブルを見ると、大崎が二人の男と仲よさ気に話している。
雰囲気からすると、知り合いのようなんだけど……。
また ナンパだったらマズイよな。
一人はなんだかチャラチャラした感じだし。
とりあえず また大声呼び戻した。

「は〜〜い。お待たせ!」
「今から、休憩行ってきて?」
「いいの? まだ忙しいんじゃない?」
「もう ピーク過ぎてるし平気。」
「そう?それじゃ お先に頂きます!」

意外にあっさりと裏に戻っていった。
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