勘違いの海

天音Side

かなり慌てて走って来たのに、佐伯くんは店の前で待っていた。

「遅い!」
「これでも 走って来たよ!」
「当たり前だ。じゃあ行くぞ。」

なんだか急いでいる佐伯くんに、不思議に思いながら後に続く。ついたのは 海の家。

「ここ 更衣室だから着替えて? で、このエプロンつけてな?」

……エプロン? エプロンって?

「ちょっと待って?なんでエプロンなの?」
「ウチ 夏はこっちもやってるんだよ。ここは、バイト使ってるんだけど 急に休んだから人手不足。で お前の出番ってわけ。」
「はぁ? 聞いてないよ!」
「言ってないからな。」

しれっと言い切る佐伯くんに、思わずチョップ。

「いたっ!!」
「……着替えてくる。」

海 入りたかったなぁ……。すぐ目の前にあるのに……。

渋々着替えて戻る。

「……お待たせ。」
「……水着って それ? 」
「……スクール水着がよかったの?」
「バカ!違う!そうじゃなくてさ……。」

なんだか、佐伯くんが変だ。
……本当にオヤジかと思った。

とりあえず 佐伯くんが持ってるエプロンを取り上げて着ける。

「じゃあ 今日一日よろしくお願いします。そろそろ開店だよね?」
「……あぁ……。」

開店したばかりは 静かだったのに、お昼頃になると 凄まじいものになった。

「おねーさん。ビール2つ!」
「こっちは かき氷!イチゴで! あとトロピカル焼きそば!」
「はーーい! お待ち下さい!」

目が回るとは この事なんだ。

「佐伯くん!1番ビール2つと8番かき氷イチゴ1つ トロピカル焼きそば1つお願いします!」
「了解! 6番のビール2つ!」
「はーい」

海の家だけあって ビールと焼きそばがよく出る。
体がキツイだけで あんまり考えなくていいのは 楽なんだけど。

「お待たせしました。ビールです。」
「きたきた!って 持って来た子も可愛いね! 泳ぎに行かない?」
「すみません。仕事中ですから。」
「じゃあ 終わった後には?」
「上がったぞーーー!!」
「はーい! それじゃあ ごゆっくり!」

なんで あんな事聞かれるんだろう?
と考えながら戻ると 不機嫌な佐伯くんがいた。

「遅い!次!」
「はぁ〜〜い」

忙しいからって 眉間に皺寄せちゃダメだよね?
厨房の中って言っても 接客業なのに。
普段から 佐伯くんが言ってる事なのになぁ〜
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