05 トリップするまで

「……もしかして、それを考えてたんですか?」

「他に何を考えるのよ」

「いや。突然来たんだから、他にもいろいろあるかと。」

「あんたが連れて来たんでしょうが」

「まぁ そうなんですけど……」

「まったく 頼りないわね。光輝だっけ?あんたいくつよ?」

「26になりました」

「26?年上なの?頼りなさすぎでしょ」

「よく言われます」

「もしかして 私が初めてのお客だったり?」

「はい。」

まったく……大変なのに捕まったもんだ。
客を見る目がない。だから 私みたいなのを捕まえたわけか……。

「はーー。仕方ないわね。どうせ予定もなかったし、乗ってあげるわよ。そのかわり アフターフォローはしっかりしなさいよ」

「もちろんです! あの 貴方には ここから近い羽ヶ崎学園に三日後の入学式から通って頂きます」

「わかった三日後ね。とりあえず今日は外に出てみるわ。地理も頭に入れたいし、今までの服は似合わないだろうから一式揃えたいし」

「では帰る時間に連絡下さい。お迎えに上がります。あとこちらで使う携帯を渡しておきますね?短縮0番は私に繋がりますので いつでもどうぞ。では 私はこれで」

「ちょっと待って!」

いそいそ帰ろうとする光輝の首ねっこを掴む。ちょっと気付いた事があった。

「……なんでしょう?」

「私って 今15なのね?」

「はい。そうです」

「って事は お酒呑めないのよね?」

「はい」

「うっわー きついなー。あと!ここが肝心なんだけど」

「はい。なんでしょう」

「なんで こっちに来る時に、この目と髪の色なんとかしてくれなかったの!?」

「何かありますか?」

「この色が嫌なの!目立つじゃん!」

「綺麗ですけど?」

「聞いてた?目立つのがイヤなの!」

「こちらではそうでもないですよ。きっと。では 私はこれで」

これ以上絡まれるのが嫌なのか、そそくさと逃げ出しパタリと扉が閉じられた。


ちっ。

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