03 トリップするまで

「……まぶし……」

朝の光りが、いつもより強烈な気がする。

「ん…… 今何時?……」

枕元の目覚まし時計を見ると、8時40分。まだ早いし、今日から休みなんだから 最初の一日は寝て過ごそう。あっという間にそう決めると、頭から布団を被る。

『ピーーンポーーン』

妙に間延びしたチャイムが鳴る。
もちろん出る気はないので無視。今日はベットから出る気はない。

『ピンポ ピンポ ピンポーーン』

「うっさい!!誰よこんな朝っぱらから!」

ふざけた鳴らし方にブチッと切れる。自慢じゃないが、私の沸点は低い。

ドスドスと玄関まで出ると、相手も確かめずにドアを開けた。
もちろん、普段なら絶対こんな事はしない。一応 女の一人暮しだし。でもそれくらい腹が立ったのだ。

「うるさいわね! 誰よ!!」

目の前に若い男が立っていた。
―――――誰?。

「……もしかして 覚えてません?」
「えーーっと。……どちら様でしょうか?」
「……あの 目が覚めてから 鏡見ました?」
「は? 今起きたから見てないけど」
「じゃあ 見てください! あ!お邪魔しますね?」
「は?ちょっ 押さないでよ!って言うか あんた誰よ!」

まぁまぁと男に押し込まれ、鏡の前に立たされた。

「いやーーー!! 髪が短くなってる!! 私いつ切ったのー!?」

腰まであったはずの髪が、胸の下辺りまで短くなっていた。

「あの……それだけ……ですか?」
「それだけ?それだけって何よ!!」

男の胸ぐらを掴むと 思いきり揺さぶった。

「あのっ!もうちょっと鏡を見てください!」
「なんなのよ!!」

男を突き飛ばすと、鏡に近づきじっくりと見る。

「やだ!胸が小さくなってる!それに顔!なんで若いの!!」
「やっと わかって下さいましたか!」
「ちょっと!いったいどういう事なの!?」
「あの ちょっと長くなるので座っていいですか?」

って言うか こいつ誰よ!
だんだんガラが悪くなる自分を自覚しつつ、リビングのソファーに座らせる。一応 お客みたいなのでコーヒーは出した。

「あ。すいません わざわざ」
「ちゃんと説明してもらうわよ?」
「もちろん当然です」
「で? あんた誰」
「運転手です」
「運転手?」
「はい。タクシーの。昨夜お乗せしたんですが」

昨日……は、だいぶ呑んで 洋子が捕まえたタクシーに乗った……はず。いつものパターンだったらの話だけど。

「ごめん。覚えてない。たぶん乗ったんだろうけど」
「ええっ!?本当に覚えてないんですか?」
「まったく」
「じゃあ! 昨日の会話は??」
「覚えてるわけないじゃん」
「マジですかぁ? うわぁ どうしょう――。」

頭を抱えて、机に突っ伏す。いったい何が何やら。

「で?あんた誰!私はどうなってるの!」

涙目になった男がぽつぽつと話し始めた。

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