02 トリップするまで

一方タクシーの中、流れる景色を眺めながら今日の出来事を振り返る。

(……やっぱ ムカツク)

「あーー どっか違うとこ行きたいよー」

何気に呟くと、ミラー越しの目が細められた。

「……行きたい所でもあるんですか?」

運転手は今からの話をしてるんだろう。酔った勢いもあり、冗談で言ってみる。

「はばたき市に行きたーい」
「……わかりました。はばたき市ですね?」

は?なんて面白い運転手だろ?酔っ払いの戯言に付き合うなんて。

「そうそう!葉月くんのいる はばたき市!あ! 2の佐伯くん達もいたらいいよね!」
「……そうですか。では、貴女をはばたき市にお連れいたしますね?」

ミラー越しにニコリと笑う。
その瞳を見た瞬間、突然眠気が襲ってきた。

「冗談に付き合ってくれて ありがと。ちょっと眠るから 着いたら起こしてね?」

目を閉じる前 強烈な光を感じた気もするが、眠気が勝ってそのまま眠りに落ちた。

「………様。 ……お客様?到着しましたよ?」

肩を揺さぶられ目が覚める。
車を降りるとそこは
―――はばたき市―――
な訳はなく、私が住むマンション前。

「運転手さん どうもありがと。今度は呑んでない時お話してね!」
「わかりました。呑んでない時ですね?では失礼します」
「じゃーね!」

なんて変な運転手なんだろ。
いちいち酔っ払いの言う事に反応しなくていいのに。

(よく あんなお人よしで運転手なんてやってられるわねー)

自分が今まで迷惑かけた事を棚に上げて 相手の心配をする。
クスクスと笑いながら よろよろと部屋に入り明かりを付けた。

(――シャワー浴びて 化粧落とさないとマズイな――)

そう思うのに 足は勝手にベットに向かっていて 着ていた服を脱ぎ捨てるとなだれ込むように 横たわると そのまま眠りに落ちていった。

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