「これを学校まで運べばいいんだね?」
「全部乗るかしら?」
「荷物は大丈夫だけど、さすがに人は無理かな?」
「ああ、私達は歩くから平気よ」
電話の相手である光輝はいつぞやの口調でリビングの端に並べられた箱を持ち上げた。
打ち合わせは何もしていなかったにも関わらず、扉を開けた瞬間理解してくれたのはありがたい。
「なぁなぁ、あれ、誰?」
「鈴香ちゃんの親戚の人だって」
ヒソヒソと小声で会話するはるひたち。
あかりちゃんがいてくれたおかげで、説明する面倒が省けて助かる。
「それじゃあ戻りましょうか」
「それなんやけどな?みんなまで学校に戻ってもらうん悪いであかりと二人で戻るわ」
「いいのに、教室まで運ぶの大変でしょ?」
「それなら平気や。まだクラスの展示終わってないで、人手はあるしな」
腕にぶら下がるだけ袋をぶら下げたはるひが玄関先で私を止める。
それならばと提案する光輝の案に、全員が納得し私の部屋を後にした。
「これで全部、かしら」
光輝の車の後部座席に、張本人のはるひとあかりちゃんの二人を乗せ、空いた空間に袋という袋を押し込んでいく。
トランクは勿論、助手席にもパズルのように詰め込まれ、運転席だけがぽっかりと空いている状態は、かなり異様な印象を醸し出していた。
「すげぇ光景だったな……」
その、なんだか分からない車を見送る私達。
誰しもが心で思った言葉を針谷が呟く。
暫く呆然と立ち尽くしたままだったが、それを壊すような咳払いで我に返った。
「それじゃあ、僕はこれで」
今更とも言える優等生モードの佐伯。
所々、空気になっていたので存在を忘れていた。
「オレ様も帰るわ」
「おつかれ」
「おつかれさま。気を付けてね」
佐伯は左、志波と針谷は右へと二手に分かれる。佐伯はともかく、こっちの二人の家はどの辺りにあるんだろうか。
まぁ、全体的にあやふやだからいいかと、私もマンションの入口の階段を上る。
部屋に戻り鍵を閉めようととしたところで、もしかしたら光輝が報告に戻ってくるかもしれないとそのままにする。
いつの間にかシンクまで運ばれていた空になったグラスを食洗機に放り込み、制服を脱いでバスルームに直行した。
05 喧騒の中の静寂