01 喧騒の中の静寂

秋も深まる11月。
単調な毎日を送る学生にとって、行事というのはどれも一大イベントで、準備期間が長ければ長いほど盛り上がりも大きく、2週間も前から校内のあちらこちらで楽しそうな人の輪が出来ていた。

しかし、ここには切羽詰まった者が数名。
正確に言えば、切羽詰っているのはたった一人で、残りは否応なく借り出された者たち。
そんな中に私はいる。なぜか、場所提供までして。

「ねぇ……いつになったら終わるのかしら」
「いつだろうな」
「なんでオレ様まで……」
「それはこっちの台詞」

どんよりと重苦しい雰囲気の私と、相変わらず何を考えてるか分からない志波、そして、たまたま居合わせて引っ張り出された針谷と、なぜかいつの間にか居る佐伯。

「そんなん言わんと!頼むで手伝って!」
「大丈夫!私頑張るからね!」

そして、このメンバーを集めた張本人のはるひと、一人やる気満々なあかりちゃん。

クラスが違うはるひが、手に負えなくなった教室の飾り付けを抱えて現れたのは放課後。
あかりちゃんに引きずられる形で手伝う事になったものの、教室は勿論、それを広げる場所がなく、仕方ないから一番近いだろう私の家を提供する事になったのだ。
人出は多い方がいいのと、荷物持ちは男手がいいというだけで、道すがら志波と針谷をピックアップ。
途中、食料を買い込んだ……ところまではよかったんだけど、そこで佐伯が当たり前のように居る事に気付いた。

「……なんであんたまでいるのかしら」
「そんな言い方ないだろ!」
「凄いね。鈴香ちゃんち広いねぇ」
「ただの1LDKじゃない。広くなんかないわよ」
「マジか…ここでバンド練習出来るぞ?」

リビングのテーブルをぐるりと囲むように、6人が思い思いに座り好き勝手に話す。
テーブルの上や床には散らばる手のひら程の紙の花。
案外手先が器用な志波と、無意味に几帳面な佐伯がその薄紙を折りたたみ、やる気のない私と針谷がやる気なく広げ、はるひとあかりちゃんが仕上げをしていた。

確かに、リビングは広めだけれど、同業者であるモデル仲間に比べたら、圧倒的に部屋数は少ない。
彼女達とは違って、洋服だのバックだの靴だのといった物に執着がないから必要がないのと、単純に掃除が面倒なだけだけれども。

「そろそろ休憩にしましょうか。それ、ちょっと片付けてね?」

辺りを見渡してみると、白だのピンクだのブルーだの。一面の紙の花が広がっている。
その、僅かに空いた隙間を探しながら対面式になっているキッチンへと進んだ。
リビングに向かう形にあるシンクの隣にある作り付けの食器棚からグラスを取り出していると、背中合わせのコンロの隣の冷蔵庫が開く音。

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