21 秋の芝生はまだまだ青い

細く尖らせた私の舌先が歯裏をくるりと撫でながら舌筋が繋がる根元へ。そして裏筋から舌先へ。
刺激が葉月を濡らし、それが摩擦を弱めていく。
奥から手前へ、また奥へ。焦らすように筋だけをなぞってから葉月の舌先を少し力を込めて跳ね上げると、小刻みに震え、唇から息が漏れた。
力が抜け伸びた舌をすかさず絡め取り巻き付ける。

誰かさんとはまた違う味。でも、嫌いじゃない甘さ。

「……ッは……」

強弱を付けて敏感な場所を撫でて絡めて。

されるがままに漏らす葉月の吐息と、私に合わせようとする葉月のぎこちなさがゾクゾクと私の背中を震わせる。
二度、三度。合わせる唇の角度を変えて吐かれる吐息の熱さを感じ、そして柔らかな唇を喰みながらそっと離れるが、ふと、自分の両肩には葉月の腕が巻き付き、腰は腿で挟まれている事に気付く。
改めてピントが合う位置まで顔を離すと、赤みが増し上気した頬をする葉月が、肩で息をしながらゆっくりと目を開けた。
熱を帯びて真っ直ぐ見つめる潤んだ瞳、微笑みを浮かべた唇。

―――乙女か。

じゃなくて、やりすぎたかもしれない。
色んな事を忘れて、思わず本気になったけど、まずかったかも。

「……サンキュ」
「……どういたしまして」

深く息を吐き出した葉月があんまりとあっさり言うものだから、素っ頓狂な答えが口から吐いて出る。

「なんか……凄く濃いプレセント、って感じ」
「まぁ……でしょうね。それより、そろそろ離してくれないかしら」

見た目はそう変わらないけれど、本人の中では余程興奮しているのか、背中に回されている腕の力がさっきより強まる。
やはりまずったようだ。今回は自分から墓穴を掘りにいったようなものだけれど。

「……当日も、欲しい」
「は?!それじゃ話が違うじゃない!ちょ!離しなさいよ!」

ふりだしに戻る。じゃない!
冗談じゃない、これじゃあ、いつまでたっても終わらないと、強行突破よろしく、回された腕を振りほどこうと力任せに腕を突っ張る。

「ダメ。当日も会わなきゃ離さない」
「バッ!寝言は寝て言いなさい!」
「じゃあ……寝る。おやすみ」
「おやすみじゃない!こら!本気で寝るんじゃなーーい!」

回された腕の力は益々強まり、嬉々とした声が頭の上で響く。
元に戻すどころか、立派なバカをもう一人育て上げてしまった私の後悔の声が青々とした爽やかな芝生公園に響き渡るのであった。

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