17 秋の芝生はまだまだ青い

そういえば、こいつって、自分の誕生日覚えていたっけ?
確か、プレゼント渡す時はまるで覚えていない風な事を言っていたけれど…。
あれは、『誕生日のプレゼント?ハハハ。期待だなんて。そんなモテない野郎と一緒にしないでくれよ』的なポーズだったんだろうか。

「それなら…ひとつだけ。」

少しの間ののち。
視線を外していた葉月が私を見つめる。

「じゃあ、移動ね。公園通りでも歩いてみる?」

ギャラリーの去り際の声を聞いていない気もするが、流石にもう居ないだろうと葉月に密着した身体を起こそうと肘を浮かしかける。

「まだ…いる。」
「え。まだ?どこにい―――。」

離されていた片手が再び背に回されて止められた。
地面に近い葉月には芝を踏む足音でも感じるのだろうか。
まさか、そんな地獄耳な人間離れした技を持ってるはずはないのだけれど。
パーフェクト王子設定だとありえるのだろうか。

「そこ。だから…このままで。」
「いや、ここまでする必要はないんじゃないかしら。」

地面に着いた肘で抵抗しているが、背に腕を回されているせいで密着する上半身。

「これなら見つからないし……役得だし…俺が。」
「ちょ!どさくさに紛れて足で挟まないの!」

なんか……葉月が急速に遠い所に行ってる気がする…。
そして妙なデジャヴ。
どこかで…いや、ここに来てから嫌と言うほど味わっているこの感覚。

間違いなくバカ白髪化している―――!?

あんなのが増殖したら困る!っていうか、葉月だけは私のイメージのままでいて欲しいのよ!微妙に、ちょっと、かなり違ってきてる気もするけれど、あそこまでにならないように手を打たなくては!

「……葉月?面白がってるんだろうけど、いつまでもこうしてる訳にもいかないでしょ?それに、買い物する時間もね?なくなるのもあれだし。」
「……買い物……。」
「そうそう、買い物買い物。」

おかしくなる傷は浅かったのか、瞬きをした葉月の腕の力が緩む。
まだ足の力は抜けてないから逃げ出せないけど、もう一声あれば……。

「じゃあ、見つからないように移動ね?」
「いや。…買い物はなくていい。」
「どういう―――?」

真近くで見つめる葉月の右手が背中を撫で上げ、私の頬を包み込む。
告げられた言葉と、その手が意味する事も理解が出来ず、見つめ返したまま思考が固まった。

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