15 秋の芝生はまだまだ青い

「それで、いつまでこうしてるの?」
「いなくなるまで。」
「そうなるわよね、やっぱり。」

頭上をうろうろとされている以上、頭を上げるわけにもいかない。
まあ、この先こんな至近距離で顔を見る事なんてないはずだし、せっかくだから目の保養に眺めておくか。と諦めついでにまじまじと見つめる。
きっとふわふわで気持ちいい髪なんだろうなーとか、ガラス玉みたいな綺麗な緑の瞳なんだろうなーとか、やさぐれた毎日が癒されるくらいの破壊力なんだろうなーとか、妄想……いや、想像していたそのまま。

「……なに考えてる?」
「いや、いい男だなーって。」
「それは……どうも。」
「いえいえどういたしまして。」

たぶん、こうも直球で返されるとは思わなかったのだろう。深い瞬きがひとつ。
それにしても、いまだ背中に回された腕が気になる。
辺りからはどう見えてるのだろうか。まぁ、家でやれ、とかなんだろうけど。

「夏は出掛けたのか?……あいつと。」
「あいつ?誰よ、あいつって。」
「さっき考えてた……花火の時、いた奴。」
「またさっきの話?それに花火って…。」

唐突に始まる会話。
さっき考えて花火の時いた…。ああ、そういえば会ったんだったわよね。
その時隣にいたのは……そうだ。さっきもちらっと、ダサいとか考えたんだっけ。

「あら。あんたの方がいい雰囲気だったじゃない。そっちこそ出掛けたの?」
「…俺の話じゃなくて。」
「私の方だって。あの時は大人数だったんだし、あんたほど甘くなかったと思うけど。で?夏休みどうだったの?」

不幸中の幸いとも言うべきか、夏休みに出くわしたのはあの花火大会の日だけ。
きっと主人公ちゃんとの親密度をばっちり上げていて、ふらふら出歩く暇がないんだとニヤニヤしてたんだけど、その成果を聞ける日が来るとは。
興味津々で顔を近づけ葉月の返事を待つ。

「どう……って。……べつに。」
「は?デートしたんでしょ?」
「いや……、相手、いないから…。」
「あんたねぇ……。」

予想外の反応に身体の力が抜け、がくりと葉月の肩におでこを乗せる。
夏休み前にあんなに私がハッパをかけたのに。
花火の時はあんなにいい感じで話しかけてたのに。
こいつは通常運転としても、なんで主人公ちゃんまでやる気ないの!

「城峰、は?」
「は?私はいい夏休みだったわよ?」
「あいつと、か?」
「違うわよ。言ったでしょ?女友達と予定あるって。」

なんで人の事ばかり気になるんだ。
違うでしょ。あんたが気にするべき相手は主人公ちゃんだけでしょ。

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