14 秋の芝生はまだまだ青い

動いた影は葉月の右手。
半身を起こしかけながら私の手首をがっちりと掴んでいる。

「だから、ごめんってば。そんなに怒る――っ?!」

ことないじゃんと続けようとした私の身体が地面からふわりと浮く。
なにがなんだか分からないけれど、自分の身は危機を感じてるのか両腕が伸び。そして掌で芝生を受け止めた。
私の視線の真下には葉月。
これはどう考えても私が葉月を押し倒しているようにしか見えない。

「ちょっと触ったくらいでこういう仕返しって、性格悪いんじゃない?」
「―――しっ……。」
「は?なにが―――。」

睨みつけるように見下ろすと、人差し指を自分の唇に当てる。
瞳は右側を気にしていて、何かを探っているように見えた。

「だからぁ!ぜーったいこっちだって!」
「いないじゃない」

甲高い女の子の声。
あー……。こんなイベントあった……。
季節違うけど。っていうか、立ち位置すら違うけども。
それにしても……ストーリーまったく無視だな。
相変わらずの展開に、肩で溜め息を吐く。

「ねぇ。どうして私がこっちなのかしら。あんたでもいいでしょ?」
「髪……長くて隠れるから…。」
「ああ……そう。」

確かに。あのイベントの時は、これくらいじゃ隠れられないんじゃない?とは思ったけどさ。

「ねー、どこ行ったのかなぁ?」

案外しつこい女の子達が辺りをうろうろとしているのが気配で分かる。
あのイベントの時はあっという間だったのに。

「で?どうするの?しばらくこのまま?」

ここで起きあがったら私共々大変な事になるだろうと思いながら、視線を私からはずしたままの葉月を見下ろした。

「……だな。」
「まあ、今更起きあがれないわよねぇ。」

四つん這いならまだしも、伸ばした両足は葉月の足の間。自分の両腕だけで体重を支えているのはきつい。

「疲れた、か…?」
「そりゃあ、こんな体勢じゃ―――。」

明後日の方向を見ていた葉月と視線が合った瞬間、脇から背中を圧迫され地面に引き寄せられる。
伸ばしていた腕が曲がり、葉月の顔の両側で肘をついた。
近い。さっきより近い。
しかも、あのイベントにこんな続きはなかった。

「……これなら?」
「楽か楽じゃないかと聞かれたら楽だわね。」

ほんとにこいつ15なのかしら…。
計算ではなく自然にやってるのだとしたら末恐ろしいとしか言いようがない。

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