12 秋の芝生はまだまだ青い

ここまで来てしまったからには仕方ない。
三人並べばやっと、といった感じの、横幅の狭い遊歩道を目的地もなく歩く。
まだまだ両脇の木々は青々としていて、日の光は強く差し込まないが、半袖の黒いタートルにストールで肩を覆ったくらいの今の格好がちょうどいい感じ。

「その色…いいな。あと、雰囲気も。」
「でしよ。安っぽく見えないでしょ?」
「安い…のか?」
「まあね。でも、あんたにも分からないくらいなら、私の目もなかなか……。」

そこで隣の葉月が私を見下ろしている事に気付く。
なんだと思う間もなく腕が上がり、肩に掛けたストールの端を引っ張った。
摘まんだ指先が擦り合わされる。

「ちょっ。小姑じゃないんだから、そんなアラ探しはやめてよね。カシミアとかと比べたら月とスッポンなのは当たり前でしょ?」
「いや。そういうの、よく分からない……。」
「ああ…あんた、服とかなんでもよかったっけ。」

そういえば、こいつって、与えられたものを普段着としてサラッと着こなすやつだった。
まあ、全体的なセンスはどうかと思うけど、この世界全てのセンスがあれだから、葉月はまだマシな方なんだろう。
バカ白髪の初期なんて大丈夫かと思うくらい最悪だし。

「どうして知ってる?」

突然足を止める葉月。
ヤバイ。まだこの話はこいつから引き出してなかったっけ。

「どうしてって…、雑誌に載ってたわよ?」
「話した記憶…ない。」
「忘れてるんでしょ?あー、でも、どの雑誌だったとか聞かないでよね。友達に見せられたやつだからどんな雑誌だったとか覚えてないんだから。」
「友達……。」

ああ…こんなに饒舌じゃ、明らかにあやしいかも。
何かを考え込むように首を少し傾けた葉月に、女優ばりに顔だけは平常心さを装う。

「それ…さっき考えてた相手、か…?」

摘まんでいたストールから指先が離れる。
歩き始めた葉月が揺らす空気が僅かな風になり、ストールがふわりと揺れた。

「さっきっていつよ。」
「さっき。…なんでもいいって言った時。」

私、なにか考えたっけ?
言い訳として頭に浮かんだのがはるひなんだけど、うっかり口を滑らせた時はゲーム内の葉月を思い浮かべたんだから、どっちにしたって考えたのは葉月なんじゃないかしら。
ああ、ややこしい!

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