09 秋の芝生はまだまだ青い

ピーン、ポーン。

「なんなのよ……。」

間延びした音が一定の間隔で部屋に響く日曜の朝。
枕の下に隠した携帯をモゾモゾと取り出し時間を確認する。
9時20分。
まだ朝のお子様番組がテレビで流れていて、平日は世知辛い世の中に追われている大人がまったりとしていていい時間帯だ。

ピーン……ポーン。

ご近所の付き合いはそもそも最初からないし、オートロックのマンションで新聞の勧誘やら何やらもまずない。
残るはこの部屋の合い鍵を持っている人物のみ。
普段は勝手に入ってくるのに、なぜ今日に限って鳴らすのか。
どう考えてもその理由はひとつしかない。
どうせ、「日曜だからといって、いつまでも寝てたら〜。」とかなんとか、能書きたっぷりなはずだ。

「日曜くらいしかゆっくり出来ないんだからいい加減してよ……。」

何処かのくたびれたサラリーマンのような台詞を吐きつつ布団を引き上げる。

「しつっこい!!」

それでも鳴り止まない間の抜けたチャイムに、勢いよく布団を押し退け、ドスドスと玄関に向かった。
扉の真ん前に立っていたとしても知ったこっちゃない。

「だから!勝手に入れば――……。」

むしろ、その間抜けな顔にぶち当ててやるとばかりに思い切り開けると別人。しかも、まったく予想外の人物に、ドアノブに手をかけたまま思考が停止した。

「おはよう。」

容姿は葉月。声も葉月。
光輝の変装とかではない。そもそも、そんな魔女っ子のような変身が出来るのかすら知らないけども。
じゃなく、どうしてここが分かるの。いや違う。それ以前に、どうしてここにいるの!

「……いいか?」

私の動揺などお構いなしの涼しげな表情をした葉月が、半分程開いたドアを開ける。
言葉と足を一歩前に出すのが同時。
私の頭は一時停止したまま、迫る葉月に合わせて一歩引く。

ゆっくり閉まったドアがカチャリと余韻のような音を立てた瞬間、ハッと気を取り戻した。

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