02 ダブルトリプルクアドラプル

「それで?どうしてそうなったんですか?」
「そんな事、私が聞きたいわよ。それより、なんで毎日あんたがいるの。」
「夏休みだからって毎日ダラダラ過ごす誰かさんを放っておけないからです。」
「仕事熱心ねぇ…。」

熱せられたアスファルトから遠いからか、窓から入ってくる風が爽やかだ。
ここへ来てから自然思考 になり。…という訳ではなく、健康的に生活しろとの小姑のお節介で仕方なくエアコンを点けないでいる。小姑とはもちろん目の前でコーヒーを淹れている光輝以外にはいない。

毎日暇を見つけてはやってきておさんどんする光輝を叩き出したりいていたけれど、取り上げても取り上げても出て来る合鍵の多さに私の方が根負けして、今は好きにやらせている。

「それで?何時から出掛けるんですか?」
「待ち合わせが6時だから…30分もあれば着くわよね。」

ガラスのポットを持つ光輝が壁に掛かった時計を見上げる。
つられて私も壁を見上げた。
時計の針は重なるように右側のど真中を向いていて、時間はまだまだ余裕がある事を告げている。

「待ち合わせが6時って…貴女、なにのんびりしてるんですか。」
「なにって…まだ2時間はゆっくり出来るじゃない。それに、用意する事なんてないんだし。なんなら、このまま……。」
「そのままってそれは部屋着でしょう?それにデートなんでしょう?デート。」
「なんであんたが興奮してるのよ。っていうか、なんなの。」

大袈裟に驚く光輝がコーヒーポットをテーブルに置き、慌てて部屋を飛び出す。
なにがなんだか分からないけど、静かになって良かったと胸を撫で下ろしながら、飲みかけのコーヒーカップを持ち、開けたままの窓からベランダに出る。
周りに緑が多いのも、少し遠くに海が見えるのも最初は寂しすぎると思ったけれど、それもかなり見慣れた。夜の明かりの少なさにはまだ驚いたりもするけど。
でも、こうやって仕事もない一日をのんびり……。

「だから。なにをのんびりコーヒーなんか飲んでるんですか。用意しますよ?用意。」
「なんかって、あんたが淹れたんでしょ?っていうか、それ、なに。」

帰ったとばかり思っていた光輝が窓に手をかけてがっくりと肩を落とす。ずるりと腕に落ちる大きな肩掛け鞄に目を向けると、何故かカッと目を見開いた。

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