18 夏にご用心

「勝負、ついたと思うけど…どうする?次は貴方?」
「―――いや、やめとく。あんたに勝てそうにないし。」
「そう。じゃあ、ソレ。連れて帰って二度と現れないで。」

顎をしゃくり上げ、突っ伏しながら泥酔したバカ男1指すと、こっちもかなり酒が回っているのかノロノロと立ち上がり、突っ伏した男の腕を掴んで持ち上げ肩に担いだ。

「そうそう、一つだけ。やったのはソレだけどアンタでいいわ。さっきの……あかりちゃんに謝って。」
「―――鈴香ちゃん…。」
「………嫌な思いさせてすみませんでした。」
「い…いえ。」

意識のないバカ男1を担ぎ上げたまま深く頭を下げる片割れ。
余程怖かったのか、まだ怯えたあかりちゃんが佐伯の後ろに隠れた。

―――私に勝とうなんて百年早いっつーの。

酒の勢いに任せてあわよくば―――なんてよくある事だったから、これくらいでバテるはずがない。なんて、自慢にもならないんだけど。

引きずるように去っていくバカ男達に鼻で笑うように見送ると、やれやれと髪をかき上げた。

その途端、静まり返っていた店内が吃驚するような拍手と歓声に包まれ、驚いて振り返る。

「いやぁ、おねーさん若いのにスゴいね!スカッとしたよー!」
「スッゴく嫌なやつだったよね!女の敵!」
「あーー、……ども。」

さっきまで見て見ぬフリをしていたギャラリーが騒ぎ出す。

何を今更、今まで赤の他人を装ってたくせに…とは思うものの、面倒事に巻き込まれたくもないわよねと当たり障りのないように軽く頭を下げた。

今日はここの従業員だしね、いちおう。

酒とはいえ、炭酸ばかりを胃に入れたせいで胸焼けがする。それに、新鮮な空気が吸いたいと溜め息をつくと立ち上がった。
その瞬間、佐伯の後ろから飛び出して来たあかりちゃんが私を見上げる。
当然と言えば当然だけれど、テーブルに並んだ空ジョッキと私を見比べ心配そうな表情を浮かべていた。

「あの…!鈴香ちゃん!」
「ん?」
「助けてくれてありがとう!あの…大丈夫?」
「あー、これくらい大丈夫。それよりあかりちゃん、今日は大変だったでしょ?―――佐伯?もういいでしょ?家まで送ってあげて。」
「あがるのはいいけど…別に。でも、なんで俺が。」

ブツブツと文句を言う佐伯にプツリと血管が切れる。
あれだけのものを目の当たりにしてもコイツには分からないのか。私ならともかく、あかりちゃんレベルなら間違いなくトラウマものだ。

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