17 夏にご用心

「これでいいのか?つーか、なんで―――。」
「ありがと。いいからちょっと黙ってて。」

舞い戻って来た佐伯の手からそれを受け取ると、相変わらず『どちて坊や』みたいな佐伯を無視してテーブルに置かれたグラスを自分の目の前に置いた。

―――短期決戦ならこっちか。

ある程度冷静な、あまり話さない方よりも、あかりちゃんにちょっかいをかけたこのチャラ男の方がバカなのは確か。

「時間かけるのもバカバカしいからサシで勝負しましょ?方法は交互、倒れた時点で負け。いい?」
「いいぜ?その方が手っ取り早いしなぁ?」
「じゃあ私からね?」

―――掛かった。

あまりにも上手く引っ掛かるバカに思わず顔が緩みそうになるのを堪えながらボトルのキャップを外す。
小さな―――ショットグラスに半分程ウォッカを注いでから炭酸水を縁近くまで静かに注いだ。
二つのボトルを相手側に押しやり右手でグラスの口を塞ぐ。

「いい?こうやって―――。」

一度相手に見せるように持ち上げてからグラスの底をコツンとテーブルに叩き付けた。

掌で蓋をしたグラスの中の液体が混ざり合い、炭酸水がシュワと音を立てる。
口元にグラスを引き寄せてから掌を浮かせ、隙間から一気に口の中に注ぎ込んだ。

ウォッカが喉を通る瞬間、カッと焼けつくような感じがする。冷たいはずなのにとてつもなく熱く、直後に頭がくらっとするが、平然を装いながら静かにグラスをテーブルに置いた。

「飲み干すの。飲めなくなるまで交互にね。次は貴方がどうぞ?」
「へっ。そんなの簡単じゃねぇか。」

私の表情を見てたいした事がないと思ったのか、チャラ男1が意気揚々とグラスにウォッカを注ぐ。私よりも若干多く。

―――あ。やっぱりバカだ。

同じように炭酸水を注ぎ、掌で蓋をしながら私を見て得意気になるバカを見ながら止めさせようかと一瞬悩んだけれど、まあいいかとテーブルに頬付きしながら眺める。

得意気な表情のままテーブルにグラスを打ち付け一気飲みしたバカが―――そのまま昏倒するのは、まるでスローモーションの映像を見ているよう。

こういう飲み方って大勢で騒ぐ時にはするんだけど、知らないって事は………まあ、あまり深く追及しない方がいいわね。

テーブルに突っ伏したバカ男1を眺めながら溜め息を大きく吐き、腕組みをしながら足もわざと組み上げると隣のバカ男2に顔を向けた。

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