09 夏にご用心

「あんた何も聞いてなかったでしょ。って言うか驚かなかったの?」
「驚くに決まってるじゃない!だって昔のあんたが目の前にいるのよ?それに!みっ、水着…ぶっ。」
「驚くのはそこじゃないでしょ。ここがどこかちゃんと分かってるのって話よ。」
「ぶくくくっ。分かってるわよ?あんたがのめり込んでた世界なんでしょ?…面白いわよね〜、どうしてか違和感ないんだもん。2次元なのによ?不思議よね〜?」
「あ、それは言えてる。頭では分かってるんだけどさ、普通に馴染んじゃうのよ。どうなってるのかしらね。」

ジョッキをテーブルに置いた洋子が、目を輝かせながらきょろきょろと辺りを見渡すのを、同じように視線だけで追いかける。

洋子が言う事はもっともな事で、私も最初から疑問に思ってた。
よく考えなくても、この人達と私とじゃまるっきり造りが違うはずだと。
違和感なく見ている私もおかしいと思うけど、この世界からしたら私だけが異物のはずなのにそれを咎める人もいないどころか、当たり前のように受け入れてる。

……もしかして、私も漫画顔に見えてたりして。

「ねぇ、そこんとこはどういう仕組みなの?」
「えー、そこは企業秘密という事で。分かっちゃったら面白くないでしょう?」
「うわっ、出たよ。最短の逃げ方。まぁ、いまさらどうだっていいけどさ。」
「……鈴香。お待ちどうさま、あ、これ宇治金時です。良かったらどうぞ。」

洋子の目配せに気付き会話を終わらせると同時に佐伯が持ってきたものをテーブルに並べる。

よほど光輝の態度に吃驚したのか、光輝の前にはさっきよりあんこがサービスされている宇治金時と私の前には……これって……。

「いらない。って言うか食べたくない。」
「なんでっ!作ったの俺だぞ?!」
「佐伯だろうと誰だろうと、これは嫌。」
「だからっ、理由はっ!」

断固拒否を示しながら顔を背けても、なんだかんだと食い下がる佐伯。光輝は幸せそうに宇治金時をほお張り、洋子は肩を震わせながら笑いを堪える。

ゲームしてる時から信じられないと思ってたけど、生で見たらこいつの味覚と頭はどうかしてるんじゃないかと思える。
味覚と身体の相性が合わない男女は絶対に上手くいくはずがない。

だからこいつとは絶対に合わない。

もし、万が一こいつと身体の相性が合ったとしても、コレを平気な顔で出すんだからムリ、絶対にムリ!

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