05 夏にご用心

「痛っ!!なっ、なに?!」
「何?!って、それはこっちの台詞!なんなのあんた、さっきからごちゃごちゃと!っていうか、どの口がえらそうに言うのかしらね、この口?!」
「いひゃい!いひゃいっへ!!」
「あんたバカじゃないの?って言うより見る目ないんじゃないの?違うわね、節穴なのよね。すっかすかになったスポンジよりも穴だらけなのよね!女ってのはね、程よく柔らかい方が抱き心地も触り心地もいいのよ!私が男だったら間違いなくあかりちゃんを押し倒すくらいだわね!」
「だっ、だって!どう見ても鈴香の方がっ!!」

まだ言うかこの男は!っていうか男ってのはどうしてこうも見た目だけでしか判断できないのか。

余計な事をまだ言いそうな佐伯の口を遠慮なしに引っ張っていると、その揉みあいから逃れていたあかりちゃんの声が響く。

「鈴香ちゃん!今のホント?」
「何がっ?!」
「押し倒すって…」
「当たり前でしょ?ふわふわ柔らかそうで絶対気持ちい……」
「じゃあ、いい。」

は?何がいいんだ?とあかりちゃんをそのままの体制で見ると私に向かってにっこりと微笑み、次に佐伯の肩をぽんと叩いてにんまりと笑う。

その勝ったと言わんばかりの表情に、今自分が口走った言葉を頭の中で反芻させる。

……マズイ事を言った気がしない事もない。

「ふふん。残念だったね、佐伯くん。鈴香ちゃんはわ・た・しの水着姿に欲情して押し倒したくなるんだって。」

「なっ!!!」
「ちょっ!ちがっ!!」

「佐伯くんでも、こればっかりは無理だよね?だって〜佐伯くんは男なぁんだもん!この先どうやっても例え女になったとしても、わ・た・し・みたいな幼児体型にはなれないよねぇ?」
「なっ、なんて事だ!!」
「あっ、あかりちゃん。私そんなつもりで言ったわけじゃ!」

あははと高笑いのあかりちゃんと、衝撃的な事実を知らされたかのようにがっくりと膝を着く佐伯が私の話など聞くはずも無く、くっきりすっきりと勝者と敗者に別れた光景が目の前にある。

…もうどうでもいいや、何かいろいろ面倒くさいし。

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