04 夏にご用心

なんだろうと扉を開けると、妙に慌てる赤い顔の佐伯が立っていた。

「もっ、もう着替えたのかな、と!」
「着替えって、パーカー脱ぐだけじゃない。ってゆーか、あんた邪魔。突っ立ってたら出られない!」

ちらちらと見つめる佐伯の額を右手でがしりと掴むと思い切り右に退かす。

なんで顔が赤いのか、それ以前に視線が泳いでいるのは何なのか。

ただ、とてつもなくうっとおしいのは確かだ。

扉を出、そういえばこの上にエプロンを着けるんだったかと佐伯に向かって口を開こうとした瞬間、これはチャンスなんじゃ?と頭をよぎる。

「ね、ね、佐伯。どう思う?あかりちゃん。」
「海野?海野がどうかしたのか?」

何の事だと本気で首を傾げる鈍い佐伯にイラつきながらも後ろに立つあかりちゃんの手首を引っ張り、私と佐伯の間に挟む。

「はら、可愛いでしょ?似合ってるでしょ?」

私にポンと両肩を叩かれ真っ赤になるあかりちゃん。

―――これはなかなかいい感じでない?

もしかしなくても佐伯を意識してるって感じ?
目を見開いてぽかんと口を開いている佐伯だって、きっと今のあかりちゃんを見たから……

「…海野、お前ってさ。」
「なっ、なに?」
「お前って…幼児体型なんだな。」

上から下まで舐めるように見つめていた佐伯がぽつりと呟く。

―――この男は女の子に向かってなんつー事を!!

「ひっどぉ〜い!!」
「ひどくなんかない!これは正直で卒直な意見だ。海野、まずお前がそんなビキニを着る事自体間違ってる。
下なんて見てみろ、中途半端に腰からだから下っ腹が出ているのがさらに強調され、上なんてそのデカイ水玉が膨張した感倍増だ。」

『目立たせたくないなら止めるべきだな。』と、まるで講義でもしているように目を閉じ人差し指を振りながら得意げに話す佐伯の頭を思い切り張り倒す。

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