03 夏にご用心

「大丈夫大丈夫。どうせエプロン着けるんだし。」
「それって前が分からないだけだもん。」
「後ろなんて自分じゃ分からないんだからいいじゃない。」

脱いだ服を鞄に無理矢理押し込みながらあかりちゃんに話す。

ちっ、全部入んないよ、コレ。

入れ方に問題ありかとひっくり返していると大きな溜め息。振り返ると諦めたあかりちゃんが羽織ったパーカーを脱いでいた。

お、佐伯の好きなピュアビキニだ。

ふわっとした印象のあかりちゃんによく似合う。

「へぇ?あかりちゃん、そういうの似合うね、可愛い。」
「ほっ、本当?」
「うん、私は好きだな。」

ん?今の会話って、なんかおかしくない?

恥ずかしがりながらも嬉しそうなあかりちゃんを前に少し考える。

なんとなく男が女の子に答える感想だったような気が……。

気のせいかと外していた視線を戻すと、乙女ポーズのあかりちゃんが私を見つめていた。

……気のせいじゃなさそうだ。

多分間違いなく何かのフラグを立てている。それもこの先やたらと面倒な事になりそうな何か。

「ねぇ、鈴香ちゃんってもの凄くスタイルいいんだね!」
「そんな事ないでしょ。」
「ううん、まるでモデルさんみたい!」
「……そんな訳ないんじゃない?」

いや、そんな訳あるんだけど。あっちじゃそうだったし、それ以前にこの年齢の時にはやってたし。

「本当にファッション雑誌のモデルさんみたいだよ〜!それに水着だってそんな感じだし、絶対間違えられるよ!」
「水着って…普通のビキニじゃない。」
「どっ、どこが普通なの?こんな大胆なの見た事ないよ〜!」

…大胆って…セクシー系のショップならこれくらい珍しくもないだろうと自分を見下ろしていると、遠慮がちにノックする音と、なぜか咳払いが聞こえる。

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