22 思わぬ出会い

「なぁ!この本どうやった?」

予想していた通り、開口一番にはるひの言葉。

「んー、まぁ驚いた、わね。」

今の答えは、本の内容じゃなく彼との出会いの瞬間の事。

「愛する彼と、手に手を取って逃避行!が、よかったよな!?」

「手……、そうね。息が止まるかと思ったわね。」

「やよなぁ!ハラハラドキドキやったよなぁ!」

一見噛み合っているような会話だけど、本当ははるひ一人が盛り上がっていて会話は噛み合っていない。

だって、私この本ってあれっきり読んでないんだもの。

私が答えていたのは、例の彼について。

どうやら懐かれたらしく、あれから曜日や時間帯を変えても、降って湧いたように出現する。
マスターに軽く脅しを掛けたから、あれから『来ている』電話をしている様子はない。

もしかしてメールかも?と勘繰ってみたけど、私より先に待ってる事もあって。

私もあの店に行かなきゃいいんだろうけど、一週間程行かないだけで学校の近くに出没したのを見た時、まだアルカードで会ってるほうが安心だと確信した。

葉月は何かと目立ちやすい。

ただ、いつ来るとはやっぱり言ってない。面倒だし、そこまで束縛されたくないし。

入学から少したってるからか、最近は新しい友達も出来たと何故かマスターが我が子のように喜ぶ。
もちろん相手は1の主人公ちゃん。バイトもアルカードでなかなか順調のようだ。

どんな女の子か気になるけど、佐伯とあかりちゃんで懲りたから下手に接触しないほういいだろうと、彼女がバイトに入らない日を選んで通っている。

「ふーん。それで電話してみるなんて、あんたも結構やるじゃない。」

「気になったから……。」

今話してるのは、彼女と初めて電話をした時の事について。

ゲーム開始時の例のアレ。

電話番号ゲットした安心感で、つい弟に情報聞き忘れたりする例のアレ。

「まぁ、子供に渡されたら詐欺とかナンパだーなんて思わないものねぇ。」

「……そこまで考えないだろ。普通。」

そ知らぬ顔で聞いているけど、葉月。

私は間違った事言ってないんだよ。

あれは、新手のナンパ。

……本人達が知らないだけで。ね?

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