別に『死んだ魚のような目』とまではいかないんだけど、無表情と言うか、感情の振り幅があまりに小さいと言うか。
生を目の前にしてみて初めて分かる。って感じ。
――さて、どうやって会話にするかが問題だ。
「ちょっとイメージ違う……。」
「なにが?」
「マスターが大人っぽくて、話聞いてくれそうだって言ってたから……。」
――いったいどんなイメージなんだ。それに話聞いてくれそうって、他人に何を求めてるんだ。
「そんなの、時と場合に因りけりでしょ?どんなイメージ持ったのか知らないけど、たいして変わらないんじゃないの?年だって同……近そうだし。」
「……口も悪いんだな。見た目と違って。」
「悪かったわね。こんなんで。でも、見た目はお互い様でしょ?あんたも派手っぽいじゃない。」
………ダメだ。本当に素の私だ。
こっちに来た時、『あわよくばお近づきに――』なんて思ったけど、これだけガラが悪いとアレだ。
ゲーム的に分かりやすく言うと、水色のハートがひゅーって落ちてる。そんな感じ。
そんな私の心の中を知るはずはない葉月が、少し目を見開いた後フワリと笑う。
「……それもそうだな。それ、早く飲まないと冷めるぞ?」
「あ、うん。そうね。」
顎で催促され、思わず同じようにカップを手に取り口をつける。
……今の微笑みはナンデスカ?
好感度下がらなかったの?それとも呆れ返ったの?
分かんねー。葉月珪、恐るべし。
「あ。モカだ。」
「……あぁ。俺、一番好きだ。」
「ふーん。私はもっと苦味があるのが……。」
「……そうなのか?」
―――なんかほのぼのしてるんだけど?
って言うかさ。本当にこの人、何をしに来たのよ。ただ興味本位で来ただけ、って事なの?
もしかしたら、自分から話してくれるんじゃなかろうかと、コーヒーを飲みながらチラリと窺う。
当の本人は、美味しそうにのんびりとコーヒーを飲んでいて……。
………ダメだ、これは。こいつ会話続ける気ないじゃん。それに、私もどう切り出していいか分かんない。
―――もう、いいや。さっさと帰ろう。
結局どうしてここに来たとか、どんな事聞かされてた、とか色々気になるんだけど、これ以上居ても肝心な部分は聞けそうにないし。
20 思わぬ出会い