20 思わぬ出会い

別に『死んだ魚のような目』とまではいかないんだけど、無表情と言うか、感情の振り幅があまりに小さいと言うか。

生を目の前にしてみて初めて分かる。って感じ。

――さて、どうやって会話にするかが問題だ。

「ちょっとイメージ違う……。」

「なにが?」

「マスターが大人っぽくて、話聞いてくれそうだって言ってたから……。」

――いったいどんなイメージなんだ。それに話聞いてくれそうって、他人に何を求めてるんだ。

「そんなの、時と場合に因りけりでしょ?どんなイメージ持ったのか知らないけど、たいして変わらないんじゃないの?年だって同……近そうだし。」

「……口も悪いんだな。見た目と違って。」

「悪かったわね。こんなんで。でも、見た目はお互い様でしょ?あんたも派手っぽいじゃない。」

………ダメだ。本当に素の私だ。

こっちに来た時、『あわよくばお近づきに――』なんて思ったけど、これだけガラが悪いとアレだ。

ゲーム的に分かりやすく言うと、水色のハートがひゅーって落ちてる。そんな感じ。

そんな私の心の中を知るはずはない葉月が、少し目を見開いた後フワリと笑う。

「……それもそうだな。それ、早く飲まないと冷めるぞ?」

「あ、うん。そうね。」

顎で催促され、思わず同じようにカップを手に取り口をつける。

……今の微笑みはナンデスカ?

好感度下がらなかったの?それとも呆れ返ったの?

分かんねー。葉月珪、恐るべし。

「あ。モカだ。」

「……あぁ。俺、一番好きだ。」

「ふーん。私はもっと苦味があるのが……。」

「……そうなのか?」

―――なんかほのぼのしてるんだけど?

って言うかさ。本当にこの人、何をしに来たのよ。ただ興味本位で来ただけ、って事なの?

もしかしたら、自分から話してくれるんじゃなかろうかと、コーヒーを飲みながらチラリと窺う。

当の本人は、美味しそうにのんびりとコーヒーを飲んでいて……。

………ダメだ、これは。こいつ会話続ける気ないじゃん。それに、私もどう切り出していいか分かんない。

―――もう、いいや。さっさと帰ろう。

結局どうしてここに来たとか、どんな事聞かされてた、とか色々気になるんだけど、これ以上居ても肝心な部分は聞けそうにないし。

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