なんだか慌てたように電話してたから、彼女とかなのかと気にも留めなかったんだけど……。
―――まさかこの人に電話してたなんて。
「それにしても、ここまで興味持ってたなんて驚きだよね?まさか、こんなに早く来るなんて思わなかったよー。」
嬉しそうに私に向かって身を乗り出すが、そんな事言われても私が知るわけないじゃないの。
こっち側で壊れてるのは彼か―――。
………と、思いたい。まだ彼はあまり話してないけど、壊れてないと信じたい。
……微妙に行動が変な気もするけど。
「それで、今日来た理由は?」
気を取り直して、ぽつりぽつりとしか話さない彼と向かい合う。正直、どっちと話しても同じ気がする。
「……奥、空いたからあっちに行かないか?」
「は? 別にこっちで―って、話聞きなさいよ!」
答えがまったく違ううえに、人のカップを持って、さっさと奥の席に移動する。
……なんだか志波の香りがする。
少し不安に思いながらも、鞄を掴んで後を追う。
葉月が座ったのは、入り口からはまったくの死角、奥ばったところにある席。何故かカップは並べてあるが、構わず向かい合わせに座る。
「それで、理由はなんなの?」
「……どうしてそっちに座るんだ?」
「初対面の人間に隣座れって言う方がおかしいの!そんな事より、り・ゆ・う!」
最初は印象を良くしよう、なんてちょっと考えたんだけど、おとなしいキャラなんか作ってたら、なかなか話が進まない。
すっかり普段の自分で葉月に詰め寄る。
「……そうだな。どうしてだ?」
「それを私が聞いてるの!」
「……お前、面白いな。」
「面白くないっ!」
どうしてここまで会話が噛み合わないのだろうか。これまで以上のキャラに、苛々しながら頭をガリガリと掻く。
この人ってこんなのだったっけ?
口数は少なかったけど、会話くらいは成り立ってなかった?
「まぁ、鈴香さん落ち着いて。ゆっくりコーヒーでも飲んで付き合ってあげてね?今日の珪くん楽しそうだから。」
嬉々としながらすっかり冷めたコーヒーを入れ替えると、そそくさとカウンターに引っ込むマスター。
これが楽しそう? このまったく噛み合わないコミュニケーションで楽しいなんて―――。
―――相変わらず表情さえも分からない。
ムッとしてる事はないと思うんだけど、ないんだよね。
目に表情っていうか、生気っていうか。
19 思わぬ出会い