19 思わぬ出会い

なんだか慌てたように電話してたから、彼女とかなのかと気にも留めなかったんだけど……。

―――まさかこの人に電話してたなんて。

「それにしても、ここまで興味持ってたなんて驚きだよね?まさか、こんなに早く来るなんて思わなかったよー。」

嬉しそうに私に向かって身を乗り出すが、そんな事言われても私が知るわけないじゃないの。

こっち側で壊れてるのは彼か―――。

………と、思いたい。まだ彼はあまり話してないけど、壊れてないと信じたい。
……微妙に行動が変な気もするけど。

「それで、今日来た理由は?」

気を取り直して、ぽつりぽつりとしか話さない彼と向かい合う。正直、どっちと話しても同じ気がする。

「……奥、空いたからあっちに行かないか?」

「は? 別にこっちで―って、話聞きなさいよ!」

答えがまったく違ううえに、人のカップを持って、さっさと奥の席に移動する。

……なんだか志波の香りがする。

少し不安に思いながらも、鞄を掴んで後を追う。
葉月が座ったのは、入り口からはまったくの死角、奥ばったところにある席。何故かカップは並べてあるが、構わず向かい合わせに座る。

「それで、理由はなんなの?」

「……どうしてそっちに座るんだ?」

「初対面の人間に隣座れって言う方がおかしいの!そんな事より、り・ゆ・う!」

最初は印象を良くしよう、なんてちょっと考えたんだけど、おとなしいキャラなんか作ってたら、なかなか話が進まない。
すっかり普段の自分で葉月に詰め寄る。

「……そうだな。どうしてだ?」

「それを私が聞いてるの!」

「……お前、面白いな。」

「面白くないっ!」

どうしてここまで会話が噛み合わないのだろうか。これまで以上のキャラに、苛々しながら頭をガリガリと掻く。

この人ってこんなのだったっけ?
口数は少なかったけど、会話くらいは成り立ってなかった?

「まぁ、鈴香さん落ち着いて。ゆっくりコーヒーでも飲んで付き合ってあげてね?今日の珪くん楽しそうだから。」

嬉々としながらすっかり冷めたコーヒーを入れ替えると、そそくさとカウンターに引っ込むマスター。

これが楽しそう? このまったく噛み合わないコミュニケーションで楽しいなんて―――。

―――相変わらず表情さえも分からない。

ムッとしてる事はないと思うんだけど、ないんだよね。

目に表情っていうか、生気っていうか。

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