18 思わぬ出会い

ゴクリと息を飲み、彼の次の言葉を待つ。

運命の瞬間を待つような気分。だって、彼が佐伯みたいなのだったら、この世界にイメージ通りな人がいないのは決定的だ。
フワリ、と髪を揺らし少し首を捻って口を開く。

「気になって。……聞いてたから。」

「誰に?」

「……マスターに。」

「何を?」

「……俺と同じくらいの年の女の子が、コーヒー飲みに来るって。」

……犯人はお前か!
私がせっかくコソコソ隠れて来てんだから、それくらい分かれよ!

思わずジロリとマスターを睨む。
会わないようにしてたなんてマスターは知らないんだから意味が分かるはずもなく、突然私に睨まれ怯んでいる。
はっきり言っていい迷惑だろう。
どういうつもりで話したのかは知らないけど。

「ほっ、ほら!鈴香さん、最初来た時モカ頼んだでしょ?あの時は、彼狙いなのかと思ったんだけどさ。」

そう前置きをして、話し始める。

なるほど、あの時私を追っかけだと警戒していたって事か。確かに今とあの時では、まったく態度が違うんだけど。

「でも、コーヒーの楽しみ方知ってるし、別に珪くんを探すそぶりもないし。雰囲気落ち着いてるし。」

そりゃそうだ。反対に会えない曜日を選んで来てるんだから、探すはずがない。
しかしどいつもこいつも落ち着いてるって、そればっかり。

「だからね?そんな人なら、珪くんも気にいるんじゃないかと思って―――。」

「は?」

「この子見た目と違って地味だからさ、友達いないんだよね〜」

『そんな感じには見えないでしょ?』と、あははと笑うがこっちはまったく話しが読めない。
彼に私の事を話してたのは分かった。友達がいないのは最初から分かってる、って言うか知ってる。
肝心なのは、何故ここに彼がいるのかと言う事だ。

「……さっき、マスターから電話あったから。」

「へっ?」

今の私の心の中を読んだかのようなタイミングのいい台詞に、思わず彼に振り向く。

「……だから、来たんだ。」

「さっきって、いつ?」

「……さっき。」

……ダメだ。話にならない。
確かにこんなキャラだけど、意味が分かんない。
お手上げ状態でマスターに向いて、無言で圧力をかける。カラ笑いでごまかそうとしていたが、私の睨みに負け白状し始める。

「えーっと。鈴香さんがドアを開けてすぐ?」

……そういえば、入ってすぐどこかに電話してたっけ。

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