ゴクリと息を飲み、彼の次の言葉を待つ。
運命の瞬間を待つような気分。だって、彼が佐伯みたいなのだったら、この世界にイメージ通りな人がいないのは決定的だ。
フワリ、と髪を揺らし少し首を捻って口を開く。
「気になって。……聞いてたから。」
「誰に?」
「……マスターに。」
「何を?」
「……俺と同じくらいの年の女の子が、コーヒー飲みに来るって。」
……犯人はお前か!
私がせっかくコソコソ隠れて来てんだから、それくらい分かれよ!
思わずジロリとマスターを睨む。
会わないようにしてたなんてマスターは知らないんだから意味が分かるはずもなく、突然私に睨まれ怯んでいる。
はっきり言っていい迷惑だろう。
どういうつもりで話したのかは知らないけど。
「ほっ、ほら!鈴香さん、最初来た時モカ頼んだでしょ?あの時は、彼狙いなのかと思ったんだけどさ。」
そう前置きをして、話し始める。
なるほど、あの時私を追っかけだと警戒していたって事か。確かに今とあの時では、まったく態度が違うんだけど。
「でも、コーヒーの楽しみ方知ってるし、別に珪くんを探すそぶりもないし。雰囲気落ち着いてるし。」
そりゃそうだ。反対に会えない曜日を選んで来てるんだから、探すはずがない。
しかしどいつもこいつも落ち着いてるって、そればっかり。
「だからね?そんな人なら、珪くんも気にいるんじゃないかと思って―――。」
「は?」
「この子見た目と違って地味だからさ、友達いないんだよね〜」
『そんな感じには見えないでしょ?』と、あははと笑うがこっちはまったく話しが読めない。
彼に私の事を話してたのは分かった。友達がいないのは最初から分かってる、って言うか知ってる。
肝心なのは、何故ここに彼がいるのかと言う事だ。
「……さっき、マスターから電話あったから。」
「へっ?」
今の私の心の中を読んだかのようなタイミングのいい台詞に、思わず彼に振り向く。
「……だから、来たんだ。」
「さっきって、いつ?」
「……さっき。」
……ダメだ。話にならない。
確かにこんなキャラだけど、意味が分かんない。
お手上げ状態でマスターに向いて、無言で圧力をかける。カラ笑いでごまかそうとしていたが、私の睨みに負け白状し始める。
「えーっと。鈴香さんがドアを開けてすぐ?」
……そういえば、入ってすぐどこかに電話してたっけ。
18 思わぬ出会い