14 思わぬ出会い

「本当にごめん、退屈だっただろ。」

まだ夕方なんだし一人で帰れると言うのに、やはり着いてきた佐伯が文字通りしょんぼりといった感じで謝る。

「別に気にしてないし。昨日眠れなかったとか、体育祭明けで疲れてる、とかでしょ。」

「なっ、なんでそんな事分かるんだよ!」

なんでって……、あれだけ待ち合わせでソワソワしてたら……ねぇ。

そんな事は言わないけどさ。

「なんでだろ?でも、まぁ面白いもの見てたし。アレって佐伯の部屋に居なかったら見られなかったからね。」

「アレって、さっき言ってたカップル?」

「そうそう、あと佐伯が慌てて寝癖直してる姿とか。まぁ、意義ある休日だったわね。」

「そんなんで意義があるとか言われても。俺はなんか納得いかない気がするんだけどな……。」

せっかく一緒にいたのに、ほとんど話も出来なかったとぼやくが、私としてはおバカな佐伯の相手をしなくてすんだのもラッキーだったと言うか、不幸中の幸いと言うか。

「佐伯、今日はここでいいわ。今から寄りたい所もあるし。」

「え?今からだったら帰るの遅くなるだろ?付き合うよ。」

家に帰るならもう少し真っ直ぐこの道を歩くんだけど、どうしても寄りたい場所があったから少し手前の曲がり角で佐伯を止める。

そして、こう切り返されるのも予測済み。

「……男の佐伯が入るにはかなり勇気がいるんだけど。」

「え?そんな所があるの?」

「まぁね。かなりの覚悟がいるとは思うんだけど、それでも良かったら私は別に構わないんだけどさ……。」

「な、なんか分かんないから止めとこうかな?」

「うん。その方が佐伯のためかも。じゃ、また明日学校でね?」

よし、これで自由だ。名残惜しそうな佐伯に手を振り曲がり角を曲がる。

佐伯の淹れたコーヒーも美味しかったんだけど、やっぱり休みの日にはここのコーヒーを飲まないと始まらないし終わらない。
日曜日毎に通うようになったあの喫茶店、平日に行かないのはもしかしたら彼に会ってしまうかも知れないから。

佐伯や志波みたいにキャラが違ったらと思うと、怖くて会えない。

でも、ここのコーヒーはどうしても飲みたい。

苦肉の策とも言うべき私が出した答えが、休みの日に通う事。

目的地の扉を開ける。その場所はアルカード。

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