11 思わぬ出会い

クスクスと笑った佐伯が『了解。』と、トレイを手にまた部屋を出て行く。
食後のコーヒーまで出すとは、マメなやつだ。

それにしても、苦しい。

戻って来るまでならいいだろうとそのまま後ろに倒れる。人の家で勝手に横になるのも、ましてや男の部屋にとも思うが見てないんだからちょっとだけ。

「はぁー、苦し。」

もう、このまま夜も食べなくてもいい気がする。
小腹空いたらお得意のアレか、スティック状のアレでいいか。それかフルーツとかゼリーで充分。

目の前が海だからか、波の音が聞こえる。
規則正しくて、心地よくて落ち着……。

ガバッと慌てて身を起こす。

マズイ、マズイ。いきなり人の部屋で眠りこけるところだった。
どうも最近昼寝の習慣が出来てて困る、ここ数年の慢性睡眠不足を補うためか、元々の暇さえあれば寝ていたい病のためか。
横になるから眠くなるんだと、さっきまで座っていた窓辺に移動する。
砂浜には所々に人影、恋人同士なのか。波打ち際で戯れるのを見ながらぼんやり。

「ふーん。『ホラホラ〜。ウミガ、ト〜ッテモキレイ〜。』『アンマリチカヅクト、ヌレルゾ〜』ってか。」

「鈴香……。何言ってるんだ?」

「そこ。なんとなくそんな感じっぽいから。」

ドアを開けた瞬間聞こえた、私の声に驚きながらもコーヒーを窓辺に置く。
アレと指を指すと、その方向を覗き込んだ。

「あぁ、あれか。お、『私を捕まえてごらん〜』って感じか?」

「そうねー、あーいうのってよく居るの?」

「そうだな、この時期とか、夏の終わりとかよく居るかな?」

そう苦笑いすると、前の窓辺にこっちを向いて腰掛ける。
コーヒーを飲みながら『あんなのって面白いのか?』と、海で戯れるカップルに目を向けている。

―――ちょっと前のアンタもアレと変わらないんだけどね。

あんなにはハシャがなかったけどさ。
B級の恋愛ドラマのように追いかけっこをしている恋人同士であろう2人を見ながら、心の中で佐伯に話しかける。

それにしても、アレってそんなに楽しいんだろうか。

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