料理が出来ないからよく分からないんだけど、普通はこれくらいの事は簡単なものなんだろうか。
「だから、やってるからだって。ほら、座って。どうせ、朝も食べてないんだろ?」
「どうして食べてないのが分かるのよ?」
「なんとなく、朝は食欲ないとか言いそうだから。」
そんなに分かりやすいのか、私は。まぁ、食に執着ないのは認めるんだけど。
勧められるままに、佐伯の隣に腰掛ける。
ここってベットなんだけど、多分気にしてないんだろう。客観的に見れば、目の前に料理があるとはいえ、思春期の男と女がベットに腰掛けてるなんてねぇ。
約一名思春期じゃないけどさ。
真昼間だから、そんな事も気付かないのか佐伯だから気付かないのか。
って、佐伯だから気付かないんだろうけど、そういうのを警戒しなくていいのは楽でいい。
「たまには食べる日もあるけどね。じゃ、いただきます。遠慮なく。」
「ん、ちゃんと全部食えよ?」
「……大丈夫、だと思う。多分。」
あんたは私の母親かよ、とは口にせず黙って食べる。
見た目通り美味しいんだよ。野菜の歯ごたえも、このチーズも。やっぱり、こいつって料理にはうるさい性質なんだ。
「どう?」
「美味しい。これって、店のメニュー?」
「いや、出してない。本当は春キャベツ入れるともっと美味いんだけどな。」
「ふーん、そうなんだ。」
メニューじゃないなら、趣味なのか。
それとも、バリスタ希望だからなのか。
でも、バリスタってここまでしたっけ?
……いた、そう言えば。本来ならそこまでしないのに、日本なんだからそれに合わせたものをって考えの人。
もしかしたら、佐伯もそのタイプなのかも。
黙々と考えながら箸をすすめる。話しながら食べたら多分途中でお腹がいっぱいになるだろう。
「ごちそうさま……。美味しかった。」
食べた、ちゃんと食べたよ。私残さず食べた、えらいよ。
スープのカップを置きながら、うな垂れる。私、かなり頑張ったと思う。
「どういたしまして。でも、かなり無理したんだろ。」
「まぁね、せっかく作ってくれたんだし。」
「普段はどんなの食べてるんだ?」
「どっちかって言うと、和食って言うかさ。ちょっと入ったのが好きなのよ。」
「ちょっと……か。懐石みたいなの?」
「この年で懐石ってどうなのよ。居酒屋とかそんな感じ?」
「なるほどな。今からコーヒー持ってくるけど、デザートどうする?」
―――まだあるの!?
もう無理と首を思い切り横に振る。これ以上食べたら吐く、間違いなく。
10 思わぬ出会い