10 思わぬ出会い

料理が出来ないからよく分からないんだけど、普通はこれくらいの事は簡単なものなんだろうか。

「だから、やってるからだって。ほら、座って。どうせ、朝も食べてないんだろ?」

「どうして食べてないのが分かるのよ?」

「なんとなく、朝は食欲ないとか言いそうだから。」

そんなに分かりやすいのか、私は。まぁ、食に執着ないのは認めるんだけど。

勧められるままに、佐伯の隣に腰掛ける。

ここってベットなんだけど、多分気にしてないんだろう。客観的に見れば、目の前に料理があるとはいえ、思春期の男と女がベットに腰掛けてるなんてねぇ。

約一名思春期じゃないけどさ。

真昼間だから、そんな事も気付かないのか佐伯だから気付かないのか。
って、佐伯だから気付かないんだろうけど、そういうのを警戒しなくていいのは楽でいい。

「たまには食べる日もあるけどね。じゃ、いただきます。遠慮なく。」

「ん、ちゃんと全部食えよ?」

「……大丈夫、だと思う。多分。」

あんたは私の母親かよ、とは口にせず黙って食べる。

見た目通り美味しいんだよ。野菜の歯ごたえも、このチーズも。やっぱり、こいつって料理にはうるさい性質なんだ。

「どう?」

「美味しい。これって、店のメニュー?」

「いや、出してない。本当は春キャベツ入れるともっと美味いんだけどな。」

「ふーん、そうなんだ。」

メニューじゃないなら、趣味なのか。
それとも、バリスタ希望だからなのか。
でも、バリスタってここまでしたっけ?

……いた、そう言えば。本来ならそこまでしないのに、日本なんだからそれに合わせたものをって考えの人。

もしかしたら、佐伯もそのタイプなのかも。
黙々と考えながら箸をすすめる。話しながら食べたら多分途中でお腹がいっぱいになるだろう。

「ごちそうさま……。美味しかった。」

食べた、ちゃんと食べたよ。私残さず食べた、えらいよ。
スープのカップを置きながら、うな垂れる。私、かなり頑張ったと思う。

「どういたしまして。でも、かなり無理したんだろ。」

「まぁね、せっかく作ってくれたんだし。」

「普段はどんなの食べてるんだ?」

「どっちかって言うと、和食って言うかさ。ちょっと入ったのが好きなのよ。」

「ちょっと……か。懐石みたいなの?」

「この年で懐石ってどうなのよ。居酒屋とかそんな感じ?」

「なるほどな。今からコーヒー持ってくるけど、デザートどうする?」

―――まだあるの!?

もう無理と首を思い切り横に振る。これ以上食べたら吐く、間違いなく。

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