07 思わぬ出会い

10分ほどの争いの後、ぐったりと私が窓辺に腰掛ける。
普段ここまで強情じゃないくせに……。
勝った事でテンションの上がった佐伯から、コーヒーを受け取る。

「なぁ、俺の部屋ってどう?」

「あ?疲れてそんな事言う気力もないわよ。」

「ヤだ。感想聞きたい。」

……やっぱり、コイツってウザイ。
さっきは元に戻ったなんて思ってたけど、戻ってなんかない。ウザさがさらに拍車をかけている。
『感想は?』としつこく何度も聞かれ、キレる寸前になりながらも辺りを見渡す。

「……いいんじゃない?こーいう雰囲気の部屋って初めてだけど。」

「やっぱり?結構自慢の部屋なんだ。」

「ふーん……。ちょっと屋根裏チック……って!」

私なに普通に会話してんのよ!
今の部分って、本来あかりちゃんとするもんでしょうが!そうなのよ!なんで私がここに居るの!

「どっ、どうしたんだよ?」

「あのさ、この部屋に入ったのってもしかして……。」

「鈴香が初めてだけど?」

キョトンと私を見つめる佐伯。
その目は『当然だろ?』と言いたげだ。
だから、私じゃマズいんだって!
ここでは、あかりちゃんといい雰囲気になるべきであって、私じゃないのよ!

……いや、私といい雰囲気なわけじゃないけどさ。
そうなのよね、そこのところがさ……。

「ずっと不思議だったんだけど、どうしてあかりちゃんじゃなくて、私なのよ。」

「海野?なんで海野なんだ?」

「佐伯の初恋、なんじゃないの?あかりちゃんって。」

「なっ!?」

これって、『なんでそんな事知ってるんだ!』的反応だよね。

漫画みたいにコーヒー噴いたよ。
本当に分かりやすい子なのねぇ。

カップに口をつけながら、佐伯の様子を観察する。慌てた様子でコーヒーを拭いててる姿は、これまでに恋愛経験がまるでないのを物語っていて――。

……待ち合わせ場所で思ったのは当たりだったって事か。

「それって―――。」

「誰も言ってないわよ?ただ佐伯が以前に会った事あるって言ってたから、カマかけてみただけだし。」

「……なんでそんな事聞くんだ?」

なんで?って言われても。私にとって、佐伯瑛は主人公とくっつくのが当たり前というか……。
いや、別に他の誰とくっついてもいいんだけどさ。誰とEDを迎えても幸せになるわけだし。
ただ、『昔出会った』事を思い出したのならアンタとくっついた方が、アンタが幸せになれるんじゃないの?

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