シャワーから出て、頭をガシガシと拭きながら冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
あー なんか憂鬱。なんでこんな事になったんだか。
そんなの、志波のせいに決まってる!!
頭を拭いていたタオルをソファーに叩き付けて、ドレッサーに向かうと乱暴にドライヤーのスイッチを入れ乾かしはじめる。
志波が、からかってるだけだと納得させたところまではよかったんだけど、何を思ったのか日曜にデートしてくれたら信用するなんて言い出しやがった。
妙に真剣で必死だから思わずオッケーしたけど、よくよく考えたらそれとこれとは関係ないじゃない。
八割髪を乾かしドライヤーを止める。
もういいや、このままで。めんどくさい。
クロゼットを開けて、目の前にあったキャミソールタイプのワンピースと、薄手の白いカーディガンを取り出す。
ゲームに出てこない服だから、何系なのか分からないけど、なんだっていいや。
ざっと服を着て、時計を見るとそこそこな時間。遅刻するかしないかスレスレ。
コンタクトをはめると鞄を掴んで外に出る。
いったいどこに行くんだろう。
はばたき駅だから、臨海公園とかショッピングモールか。それか、水族館?どちらにせよ、佐伯の好きな場所には違いない。
テロテロと歩いて駅へ向かう。
こっちへ来ての初デートが佐伯。
………嬉しくない。
足どりも重く駅に着くと、ソワソワとした佐伯を見つけた。
……帰ってもいいだろうか?
まるで、初デートをする中学生くらいの男の子が、やたら早く着きすぎて今か今かと待ってるみたいじゃない。
……そんなわけないわよね?
プリンスって呼ばれるくらいなんだから、デートの1回や2回くらい…あるはずよ。
今どき、ないなんて事ありえない。
「……お待たせ。待っ……た?」
「いやっ、俺も今来たばっかだから!」
「……そう。それならよかった…けど。」
……どうも、今来たばかりには見えないんだけど。
それに、どうしてそんなに頬を染めて、嬉しそうなんだ。
「なっ、なんか今日の鈴香って大人っぽいよな?」
「そう? 別に普通だと思うけど。」
「そうなのか?でも似合ってる。俺、好き。」
どう考えても、佐伯の好きなピュア系とは思えないんだけど……。
コイツって、なんだかよく分からない。
02 思わぬ出会い