19 面白がってるんでしょ?

って事は、ウチのクラスが一位になる事はないか。佐伯がどのくらい早いか知らないけど、志波には勝てないだろう。間違いなく。

「あんた、しっかり応援なさいね?」

「無理でしょ? 相手は志波なんだし。」

「そんな事分からないじゃない。もしかしたら、愛の力で奇跡が起きるかもよ?」

「何、訳の分からない事言ってんの。そんな事、これっぽっちも思ってないでしょーが。」

「あ。でも、志波くんを応援したら、ジェラシーと言う愛の力で勝てたりして。」

「意味分かんないから。」

好き勝手な事を言って一人笑っている保健医をほっといて、いつの間にか始まったリレーに目を向ける。
さすが最後で一番の花形競技。応援の声が凄い。それに、ウチのクラスって結構早いんだ。今の所トップを保ってる。そういえば、陸上部の子もいたっけ?

「佐伯く〜〜ん! 頑張って〜!!」

示し合わせたかのように揃った黄色い声援。まるで、どこぞのアイドルのようだ。周りの声援を掻き消す程の黄色い声と共に、佐伯にバトンが渡った。
へー。思ってたより早いんだ。てっきり過去の栄光なんだと思ってたけど。

「佐伯くん、足も早いのね。まぁ、リレーに出てるくらいだから当然なんだろうけど。」

「みたいね。でも、アレには勝てないわね。早過ぎるわ。」

「あらま。ホントね。」

最後のコーナーを曲がったところで佐伯の後ろについたのは、やっぱり志波。
バトンを受け取ったのは、最後だったはずなのに。いったい何人抜きなんだろ。
どちらも必死な顔で、私の前を駆け抜けていく。まぁ、佐伯の方がなんだけど。悲鳴のような声援と応援の中、縺れるように二人がゴール。結果は、僅差で志波が勝ち。
当然と言えば当然。あれだけの追い上げしたんだから、最後に伸び悩むのは仕方ない。同時に走り出してれば、あっという間に佐伯を置いていくだろう。

「ん〜。青春を見た!って感じだったわね」

「何?それ。」

「いい男2人の必死な顔っていいじゃない?っと、怪我人みたいね。じゃ、仕方ないから仕事してくるわ。」

満足気にヒラヒラやる気なく手を振り、戻っていく姿を見送っていると大きな黒い影が空から降ってくる。

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