って事は、ウチのクラスが一位になる事はないか。佐伯がどのくらい早いか知らないけど、志波には勝てないだろう。間違いなく。
「あんた、しっかり応援なさいね?」
「無理でしょ? 相手は志波なんだし。」
「そんな事分からないじゃない。もしかしたら、愛の力で奇跡が起きるかもよ?」
「何、訳の分からない事言ってんの。そんな事、これっぽっちも思ってないでしょーが。」
「あ。でも、志波くんを応援したら、ジェラシーと言う愛の力で勝てたりして。」
「意味分かんないから。」
好き勝手な事を言って一人笑っている保健医をほっといて、いつの間にか始まったリレーに目を向ける。
さすが最後で一番の花形競技。応援の声が凄い。それに、ウチのクラスって結構早いんだ。今の所トップを保ってる。そういえば、陸上部の子もいたっけ?
「佐伯く〜〜ん! 頑張って〜!!」
示し合わせたかのように揃った黄色い声援。まるで、どこぞのアイドルのようだ。周りの声援を掻き消す程の黄色い声と共に、佐伯にバトンが渡った。
へー。思ってたより早いんだ。てっきり過去の栄光なんだと思ってたけど。
「佐伯くん、足も早いのね。まぁ、リレーに出てるくらいだから当然なんだろうけど。」
「みたいね。でも、アレには勝てないわね。早過ぎるわ。」
「あらま。ホントね。」
最後のコーナーを曲がったところで佐伯の後ろについたのは、やっぱり志波。
バトンを受け取ったのは、最後だったはずなのに。いったい何人抜きなんだろ。
どちらも必死な顔で、私の前を駆け抜けていく。まぁ、佐伯の方がなんだけど。悲鳴のような声援と応援の中、縺れるように二人がゴール。結果は、僅差で志波が勝ち。
当然と言えば当然。あれだけの追い上げしたんだから、最後に伸び悩むのは仕方ない。同時に走り出してれば、あっという間に佐伯を置いていくだろう。
「ん〜。青春を見た!って感じだったわね」
「何?それ。」
「いい男2人の必死な顔っていいじゃない?っと、怪我人みたいね。じゃ、仕方ないから仕事してくるわ。」
満足気にヒラヒラやる気なく手を振り、戻っていく姿を見送っていると大きな黒い影が空から降ってくる。
19 面白がってるんでしょ?