諦めて携帯画面に目を落とし、アラームをセットする。机の上に無造作に転がしたところで、まだ佐伯が隣にいたのに気付いた。
「そういえば、行かなくていいの?」
「うん。もうちょっとだけ。」
「ふーん。ま、頑張って。じゃ、おやすみ。」
なんだろう?じっと見て。そんな事を思いながらも、机に突っ伏す。まずは睡眠第一。そのうち出ていくだろう。
外とは違って風も涼しくて、ちょうどいい日当たりで気持ちがいい。よく眠れそうだな。と思った次の瞬間、耳元で携帯のアラームが鳴り響いた。
枕にしていた手でパタパタと携帯を捜す。セット間違いかと思うくらい、あっという間に眠ったらしい。相変わらずの寝付きのよさ。
自分に感心しながらアラームを止め、うーんと伸びをする。当然だけど隣には誰もいない。
身体を左右に捻り、パキパキと音を鳴らしてから立ち上がり教室を後にする。今から下に降りても充分に間に合う。
応援席まで戻らなくてもいいか。適当に見えるところから見れば、義理は果たせるだろう。
校舎から出ると、ムッとする熱気。空いていた場所に足を進めると、リレーのゴール一歩手前くらい。
これはなかなか……
「いい場所見つけたわね? 佐伯くんの応援?」
「お昼ご馳走になったから。これくらいはしないとバチが当たるでしょ?それより、保健医がウロウロしてていいの? 奥野センセ?」
隣に立ったのはダメ大人第一号。自分の事は置いといて、間違いなく彼女が一番だ。
「委員の子もいるし大丈夫なんじゃない?すぐそこが救護場所なんだし。」
隣のメインテントをクイッと顎で指す。あまりにやる気がない姿が、とても養護教諭だとは思えない。
「委員の生徒はホント災難だわね。あんたみたいなのが保健医だなんて。」
「誰も知らないから大丈夫なのよ。それより、出てきたわよ?リレーの選手。」
【最後はクラス対抗のリレーです――】
アナウンスと共に、選手である生徒達が入場してくると、各スタート位置に別れる。ウチのクラスのアンカーは佐伯。その中に、目立たないわけないだろうと思える人物がいた。
「あら? 志波くんじゃない。あ、そうか。怪我した生徒の子、リレーにも出るとかなんとか言ってたわね。」
あぁ、あの障害物で怪我した子。
あの子の代わりか。また律儀な性格なことで。
18 面白がってるんでしょ?