17 面白がってるんでしょ?

今の合図に気付くなよ?と心の中で激しく念じながら、佐伯のお弁当箱の蓋を戻す。いくら野菜ばかりといっても、食べ過ぎて胸焼けする。

「ごちそうさま。料理まで出来るとは思わなかったわ。」

「まぁ、必要だったから。鈴香は一人なんだろ?本当にしないのか?」

「だから出来ないって言ったじゃない。あんまり必要じゃなかったし。」

一人で暮らし始めた頃から仕事が忙しくて、ほとんど寝に帰ってるだけだったし、作る暇があるなら寝たいって感じだったし。あの定食屋のご飯はホントに美味しいし、それに酒を覚えてからは余計に家に帰るのが遅くなったんだよなー。
あの頃は、ちゃんとした人としての生活をしてなかったわね。

ってこっちに来てまだ日も浅いし、やっぱりまともな生活じゃないんだろうけど。

「……あのさ、ちょっと立ち入ったこと聞いていいか?」

「は?何?」

「なんで一人暮らしなんだ?」

「何でって……」

そりゃあ、もう自立してるから。なんて言えないか。

……私の家族構成って、いったいどうなってるんだろ?まさか、天涯孤独とかになってるんじゃ。……まさかね。

「なんかあるのか?」

「えーっと、ヒミツ。」

「また、企業秘密かよ。」

「ま、そんな感じ?それに、あんただって他人に踏み込まれるの嫌でしょ?」

「それは! ……そうだけど。」

それっきり黙ったままの佐伯。

ちょっと意味深に言い過ぎたか。でも変に誤魔化して、後から辻褄が合わなくなっても困るし。

帰ったら光輝呼び出して、どういう感じで私がこの世界に存在してるのか詳しく聞いてみよう。

それにしても、深入りするほど付き合いが無い今気付いて良かったわ。誤魔化す、とか駆け引きする、とかって面倒な事が一番苦手なんだよね。

少しざわついてきたグラウンド。もうすぐ午後の競技が始まるらしい。窓から見える色とりどりのTシャツ姿の生徒やら、学ラン、チアガールの生徒。


あぁ、一発目の応援合戦か。


アレのどこかに、女キャラの藤堂竜子がいるんだ。ちょっと見たかったな。学ラン姿。目立つだろうから、ここからでも見えそうなんだけど。

学ラン姿の彼女らしき人物を探しながら、携帯を取り出す。

無理か。そうそうあの恰好でウロウロしているとは思えないし。

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