「いいだろ、別に。」
「まぁ、ええんやけどさ。これって、普通反対なん違うん?」
「私に期待しても無理よ?料理なんてした事ないんだから。」
「ほんまに!?」
「まったくないってわけじゃないんだけどさ、才能ないのよ。」
そう、やった事はある。一人暮らし始めた頃は、いろいろやってみたんだけどね……。
過去の失敗を振り返ってうんざりとする。レシピとか見ても、どうしてか違う物体になるんだよね。本当に才能ないと思う。
「やけどさ、出来やんかったら困らへん?」
「別に……。外に出たら何でも売ってるし、困らないけど。」
「ちゃうちゃう!将来結婚した時とか!」
この年から将来の心配だなんて、しっかりしている。でも、この子って恋愛にも夢見がちだったから結婚にも憧れがあるんだろう。
それにこのくらいの時なら、そんな風に思ってもおかしくないんだろうし。
「結婚……ねぇ。ま、そんな事になったら、しなくていいって言う人か、やってくれる人を選ぶわよ。」
「そんな人おるわけないやん!」
「そうかしら。今は男の人だって料理くらいするだろうし、世の中広いんだからやってくれる人の1人や2人―――」
「俺がやる!だから結婚してくれ。鈴香。」
「佐伯くんのバカ!鈴香ちゃん、今の世の中結婚なんてしなくていいんだから!
私がおさんどんやるよ!」
「バカはお前だろう海野!女の幸せは結婚だろうが!」
「そんな事ないです〜。佐伯くん頭固いんじゃないの?」
また始まった……。どうしてこの2人は……。やっぱりあれなんだろうか、喧嘩するほどってやつ。
うんざりとしながら、蓋に盛られたおかずをつまむ。
定番の卵焼きはちゃんとダシ巻き、唐揚げはどうやったのか冷めても柔らかいし、根菜の煮物も合格点。
それにしても、一番気になるのはこの昆布巻き。中は鮭なんだけど……、これも手作りなんだろうか?
恐るべし、佐伯。って言うか、光輝の料理も美味しかったわよね……。
一般的な世の男達は、料理が出来るのだろうか。
私は今までハズレばかりと付き合っていたのかもしれない。
これからは、見た目や財力じゃなくて料理が出来るかどうかをポイントにしよう。
15 面白がってるんでしょ?