「じゃあ、ご飯はどうしてるの?」
「えー?お店で食べたり、コンビニで買ったり……かな?」
元の世界じゃ行きつけの定食屋があったから良かったんだけど、こっちはないから不便なんだよね。
コンビニ弁当って飽きるしさ。どうせなら、あそこも一緒に来てくれたら衣食住完璧だったのに。
そんな事を考えながらゼリーのキャップを外そうとすると、隣から手が伸び奪われる。そしてコトリと目の前に置かれたのはブルーの布に包まれたお弁当箱。
「こっち食べろ。そんなのばっか食べてるから細いんだ。」
「……そんなのって、完璧なバランスじゃない?取りたい栄養をすぐに補給って。」
「これは補助なんだ!ちゃんと食べて足りない栄養を取るためのもの!」
「……さっすが、よくご存知で。」
「いいから!食べろって!」
なぜかプリプリと怒り出すと、お弁当箱を広げる。中にはいろんな種類のおにぎりに何種類かのおかず。
こいつって、サンドウィッチとかいわゆる喫茶店メニューしか作れないんだと思ってたけど、こんなのも出来るんだ。
なんかちょっと、いやかなり意外。
「へぇ……ホントにいいの?」
「いいに決まってる。ちゃんと、食えよ?」
「あ、無理。こんなに食べられないし。ちょこちょこっと貰えたらいいよ。では、遠慮なく。」
いただきますと手を合わせてから、おにぎりを掴む。丸くて、海苔が巻いてあり黒ゴマなんてふってあって見た目がいいけど、朝からこんなの作ってくるなんて相変わらずマメと言うか芸が細かいと言うか。
もしかして、和食も完璧なんだろうか?とほおばる。
「あ、中が高菜だ。」
「嫌いだったか?」
「んーん。高菜好きだよ?おいし、塩加減もいいね。」
「そ、そか、じゃあどんどん食べろ。おかずもこれとかこっちとか。」
嬉しそうに笑うと、お弁当箱の蓋にいろいろとおかずを載せる。
嬉々とした姿はまるでアレのようだ。
「なんや、彼女とか奥さんみたいやな。」
そう、そんな感じ。普通なら、絶対反対の絵図らだ。特に佐伯は顔がいいだけに、きっとおかしな光景だろう。
女の子に、嬉しそうにおかずを取り分ける二枚目。あんまり見た事がない。
14 面白がってるんでしょ?