100メートルのスタート位置に入ってきた生徒の中からあかりちゃんの姿を探す。
「いた。」
やっぱりと言うか何と言うか、一番先に見つけたのは佐伯だった。
お、やるじゃん佐伯、なんだかんだ言ってもちゃんと見つけるなんて。
やっぱり、若者はそうじゃなくっちゃね。
うんうん、と一人納得。やっと、ときメモの世界に来たって感じ。
「鈴香、どうかしたん?」
「ん?なんでもない、なんでもない。」
ひらひらと手を振ってあかりちゃんに意識を向ける。
ちゃんと走ったとこって見た事ないけど、短距離なんて花形競技に出るくらいなんだからよっぽど速いんだろう。
いつの間にパラメーターが上がってたのか知らないけど、まさか運動音痴なのに立候補するなんてない……わよね?
微妙に緊張した顔に若干不安がよぎる。
「あかりって、足速いん?」
「さぁ……。佐伯は知ってる?」
「俺が知るわけないだろ。」
それぞれ結構接触しているはずなのに、3人とも知らなくてお互いが顔を見合わせる。
スタート位置に立ったあかりちゃんの顔が強張って見え、かなり嫌な予感。
一緒に走る子達の足が速いのかどうか分からないけど、あんなに硬くなってたら上手く走れないって。
スターターの音に走り出すものの、案の定少しずつ遅れていく。
「あ〜、あかり!負けたらあかんて!もっときばりや〜!」
いや、そんなの無理だから。他の子達はかなり速くて、あかりちゃんはあきらかに遅い。
やっぱり、最初の年でパラが必要な競技は無理なんだって!
こんな事になるなら、さりげなく伝えるべきだったのか……。でも、気づいた時には決まってたんだっけ。
お願いだから3位までに入って!好感度が下がるんだから!
そんな、必死の願いも虚しく結果は4位。
「なんだ、あいつ遅いんだ。」
あー ほら、親密度下がってるよ!
ボソリと呟く佐伯に、心の中で悲鳴を上げる。
今、いくつ下がった?って言うか、あかりちゃんと佐伯の友好度ってどれくらいなのよ!
「あはは。やっぱり、無理だったよ〜!」
「なんや、あかり。残念やったなぁ。」
妙にご機嫌なあかりちゃんが、手を振りながら帰ってくる。こっちはどうフォローするか悩んでいるというのに、悔しくもないのか楽しそうだ。
「あ、あのさ。あかりちゃんって、走るの得意……だったり?」
「ん〜〜、そんな事ないよ?」
「じゃ、じゃあ、どうして?」
「だって、走るだけなら簡単なんだもん!」
12 面白がってるんでしょ?