10 面白がってるんでしょ?

そうか…… 志波もアホだったんだ。
微妙に違う意味で。
両手を広げ、青い顔したあかりちゃんを追い詰めながらどこかに消えていく志波を見送る。ニヤニヤと嬉しそうな顔が見えるようだ。

……分かりにくい表情だけど。

「なぁ。志波の紙になんて書いてあった?
もしかして、『好きな女の子』とかやったりする?!」

「あーー、それなんだけど……」

「そうなのか?! あいつ、やっぱり鈴香の事好きなんだな?!」

「いや、違……」

「ライバルが多いのは当たり前だけどな!
俺は絶対に鈴香を渡さないからな!」

「最後まで……」

「いいか?鈴香!一番鈴香の事が好きなのは俺なんだからな!」

佐伯に両肩を掴まれ ガクガクと揺さぶられる。

……ウザイ、ウザすぎる。

どうしてこんなに直球なんだ。って言うか、どうしてここまで前のめりな性格なんだ。

「……ごめん。なんかいらん事ゆーたみたいやな。」

白熱する佐伯に、はるひが両手を合わせて謝る。

―――気付くのが遅いって。

「なぁ、鈴香は志波の事なんか 好きじゃないだろ?違うだろ?!」

「は?」

「だって そうだろ? 素直に抱かれてたじゃないか! あのメモに『好きな女』って書いてあったのに!」

揺さぶるのを止めた佐伯が、マジな目で私を見つめる……が。
あの時の私は分からないだろうが!!
あまりに思い込みが激しくて頭痛がする。たしかに、ゲーム上でも屈折というわりには 真っ直ぐと言うか素直だというか、不器用というか。
視野が狭いって思ったけど、目の前の佐伯は狭いどころじゃなく、針の穴だ。

本当の事を話したら、怒るだろうか。
いや、泣くかもしれない。
だって からかわれてるだけだもの。

少し悩んで、今の質問にだけ答える。
正直、玩具にされてるとは気の毒で言えない。

「そんなの書いてなかったから。別に 彼の事が好きなわけでもないし、あっちが私を好きなわけじゃないし。」

「……本当か?」

「ホント、ホント。あの時は、たまたまあーなっただ……」

言い終わらないうちに、みるみる表情が明るくなる。

……やっぱり正直に言うべきだったか?

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