09 面白がってるんでしょ?

そして、説明されなくても分かる自分も嫌だ。

「って事は、佐伯をからかうためだけに私を連れてったって事?」

「まぁ、そう言う事だな。」

「じゃあ、あそこで悩んでた理由は?」

紙を見た時、かなりの時間悩んでた。これならどこにでもあるんだから、悩む必要なんてないじゃない。

「あぁ。最初は普通にそこらの奴から借りようと思ったんだけど……。」

「うん。」

「……ちらっとお前らが見えて、佐伯がなんかお前に言ってたから……。」

「……うん。」

「お前を連れてったら 佐伯がどんな面白い顔するんだろう……。」

「あー。もう全部分かった。」

ただ、佐伯がアタフタするのが見たかっただけってわけだ。そして、それが見れて満足してる。そういう顔だ……

「あの姫だっこもそのため、ね?」

「……そういう事だな。」

「あんた…… バカ?」

そこまでして 佐伯をからかいたい理由なんてないだろうに。

って言うか、私が知らないだけで佐伯と志波には接点があるんだろうか。

中学とかだったら私が知る訳ないんだし。

「……戻るか? 席に。」

「あー。戻る、けどさ。もしかして、またついて来るの?」

「あぁ。ヒマだし。」

「……よっぽど退屈してるのね。」

あちこちからの冷やかしの声を浴びながら 2人……、いや、3人が居る席に戻る。

ニヤニヤと笑うはるひと、ボーっと志波を見つめるあかりちゃんと、今にも噛み付きそうな佐伯が待っていた。

「鈴香、お疲れ! 志波もなんや やるなぁ〜。」

「はるひ、そんな調子に乗るような事言わないの。……あかりちゃんは大丈夫?」

「う、うん。ちょっとびっくりしちゃったよ。凄かったんだもん。」

なにが凄い?と聞いてみると、私が連れ去られた時の状況を詳しく、興奮気味に話し始めた。

どうも ツボにハマったらしい。お姫様だっこは女の子の憧れだそうだ。

この状況での姫だっこに、憧れる要素があるとは思えないんだけど……

「いいよねぇ〜 鈴香ちゃん。」

「じゃあ あかりちゃんもやってもらえば?」

「無理! 私重いから無理!!」

「……海野、俺ならいいぞ?」

「えっ? ダッ ダメ!!ホントに重いんだから ダメ!!」

ジリジリと後ずさるあかりちゃんを、志波が追い詰めてどんどん遠ざかって行く


なんとなく分かった。あいつって、誰かれ構わずからかうのが好きなんだ…… 

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