「そう言えばさ、あの紙。なんて書いてあったの?」
真っ直ぐ向かって来たって事は、私が持ってる物とかなんだろうけど、特別な物は何も持ってなかった。
あかりちゃんやはるひと違いはなかったように思う。
2人と違った事と言えば……
「もしかして、ペットボトルだったとか?」
「いや、違う。」
ニヤニヤと笑いながら 応援席を見ている志波。その先に佐伯がいるのは気のせいじゃない。
「じゃあなんなのよ。見せて、あの紙。」
「……見たいか?」
「見たいに決まってるじゃない。」
今の志波の視線、その先には佐伯。そして 今日の一連の意味不明な行動。
私が呼ばれた…… 違うか、連れ去られた理由はひとつしかないような気がするんだけど もしかしたら、万が一にもまともな事が書いてあると信じたい。
「……本当に見たいか。」
「だから、見たいって言ってるんだけど」
「……後悔しないか。」
微妙に何かと被る台詞。こんな場所、こんなシーンで聞く台詞じゃなかったハズなんだけど。
「しないってば、早く見せて。」
志波に向かって、掌を差し出す。やっと私に身体を向けると、ハーフパンツのポケットから小さく折り畳まれた紙を出した。
「……怒るなよ?」
ニヤリと笑うと掌に乗せる。
それって、私が怒るような事が書いてあるって事じゃない。
それに、怒られる事を期待してるって訳ね?
バカじゃないんだろうか、と思いながら紙をめくると そこにはごくごく簡単な文字が書かれていた。
『 タ オ ル 』
スポーツでもハンドでもバスでもなく、ただのタオルの三文字。
たしかに私の首にはタオル。
でも、全校中私だけがタオルを持ってるわけじゃない。今日は、誰しもが持ってる当たり前のアイテム。
そしてあの時だって、私の隣のはるひの首にもタオル。
「ちょっと! どうして私だったって言うか、私いらないじゃない!」
そう、必要なのはタオルで私じゃない。
メモを志波に突き付けると やっぱりニヤリと笑う。
「お前付きの方が面白いから。」
「だから!どうして面白いのか、説明して。ちゃんと!分かりやすいように!」
「……アレ。」
ニヤニヤと笑ったままで、顎で応援席を指す。
……なんか 言われなくても分かった気がする。
―――――この男、嫌だ。
08 面白がってるんでしょ?