08 面白がってるんでしょ?

「そう言えばさ、あの紙。なんて書いてあったの?」

真っ直ぐ向かって来たって事は、私が持ってる物とかなんだろうけど、特別な物は何も持ってなかった。

あかりちゃんやはるひと違いはなかったように思う。

2人と違った事と言えば……

「もしかして、ペットボトルだったとか?」

「いや、違う。」

ニヤニヤと笑いながら 応援席を見ている志波。その先に佐伯がいるのは気のせいじゃない。

「じゃあなんなのよ。見せて、あの紙。」

「……見たいか?」

「見たいに決まってるじゃない。」

今の志波の視線、その先には佐伯。そして 今日の一連の意味不明な行動。

私が呼ばれた…… 違うか、連れ去られた理由はひとつしかないような気がするんだけど もしかしたら、万が一にもまともな事が書いてあると信じたい。

「……本当に見たいか。」

「だから、見たいって言ってるんだけど」

「……後悔しないか。」

微妙に何かと被る台詞。こんな場所、こんなシーンで聞く台詞じゃなかったハズなんだけど。

「しないってば、早く見せて。」

志波に向かって、掌を差し出す。やっと私に身体を向けると、ハーフパンツのポケットから小さく折り畳まれた紙を出した。

「……怒るなよ?」

ニヤリと笑うと掌に乗せる。

それって、私が怒るような事が書いてあるって事じゃない。
それに、怒られる事を期待してるって訳ね?
バカじゃないんだろうか、と思いながら紙をめくると そこにはごくごく簡単な文字が書かれていた。

『 タ オ ル 』

スポーツでもハンドでもバスでもなく、ただのタオルの三文字。

たしかに私の首にはタオル。

でも、全校中私だけがタオルを持ってるわけじゃない。今日は、誰しもが持ってる当たり前のアイテム。

そしてあの時だって、私の隣のはるひの首にもタオル。

「ちょっと! どうして私だったって言うか、私いらないじゃない!」

そう、必要なのはタオルで私じゃない。
メモを志波に突き付けると やっぱりニヤリと笑う。

「お前付きの方が面白いから。」

「だから!どうして面白いのか、説明して。ちゃんと!分かりやすいように!」

「……アレ。」

ニヤニヤと笑ったままで、顎で応援席を指す。
……なんか 言われなくても分かった気がする。

―――――この男、嫌だ。 

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