06 面白がってるんでしょ?

「なんか ほんま大変やな。」

「……うん。そう、大変。」

「変な人は無視!無視! ね!鈴香ちゃん、次は借り物競走だよ!ほら、志波くん!」

相変わらず何気にひどいあかりちゃんが、ほらほらと服を引っ張り、志波がいる場所を教えてくれる。

なんだ、もう出番じゃない。

パアンという乾いたスターターの音と共に 志波が走り出す。
さすが元野球小僧、スタートダッシュが早い。

「やっぱ 志波は早いなぁ」

「すごいんだね? 志波くんって。ね?鈴香ちゃん。」

「うん。……早いね。」

「俺だってあれくらいわけないんだからな!」と騒ぐ佐伯を無視し、3人で志波の姿を見つめる。

【さぁ! 一番手にやって来たのは、D組の志波! さて!手に取った紙にはなんて書いてあるのでしょうか!】

やけに盛り上がるアナウンス。
志波はしばらく紙を見つめ悩んでいる。そんなに悩むほど、難しい事が書いてあるんだろうか?

【あーっと!志波が悩んでいる間に他の生徒も到着!次々走り出したぞ!】

「なんや そんなに悩む事なんやろか?」

「字が読めないんだっ!」

「そんなわけないでしょ」

「もう 鈴香はあんな奴見るな!目が腐る!」

何?その小学生みたいな台詞。なんでそんなに敵対心持ってるんだか。

【おぉーっと! ついに志波が動き出しました!さすがです!走り始めると早ーい!】

あ。決まったんだ。

こっちに向かってくる。まっすぐと。

そして目が合ったまま。バッチリと。

【志波!まっすぐにB組の応援席に向かっています!さーて! なんというお題だったのでしょうか!】

「ほんまやな。こっち来そうやな。」

「うん。来そうな勢いだね。」

「来るな! よそへ行け!」

「佐伯。ここ学校だけど―――」

いいの?と続けようと佐伯に顔を向けた。
今は周りに誰も居ないけど、バレて困るのはあんたじゃない。

「―――城峰!!」

珍しいって言うか、初めて聞く大きな呼び声にびっくりしてグラウンドに目を向ける。
応援席に飛び込んで来る志波にアナウンスも異様に盛り上がる。

【おーっと 志波! B組の城峰さんを名指し!これはいったいどういう事だー?】

どうもこうも そんなの私が聞きたい。

prev 6/20 next
しおりを挟む/しおり一覧

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -