風になって

この世界は少し変。元々ゲームなんだから、基準が違うのかもしれないんだけど。

「ね！ 鈴香ちゃん。志波くんってカッコイイよね！」

「は？ そう？」

「うん！ なんか余裕たっぷりって感じでしょ？」

あかりちゃんにはそう見えるのか。って言うか あかりちゃんのタイプなんだろうか？

確か 『優しくてカッコイイ人』が好みだったはず。佐伯の事じゃないの？

「志波くんと鈴香ちゃん、並んでるとすごくお似合いなんだもん。羨ましくなっちゃった。」

「はぁ？ それって どういう―――」

「似合ってなんかない！ 鈴香の隣に似合うのは俺だけだ！」

…………また バカが出た。

振り返ると バカ。いや、佐伯。どうやって振り切ったのか、取り巻きが居ない。

「残念、佐伯くん。 一番は私なんだよ？二番目に志波くんなの。佐伯くんはそれ以下なんだよね〜」

あかりちゃん、やっぱり基準は自分なんだね……

でも志波には好感触？それとも 裏をかいて、やっぱり佐伯なのか…… うーん、微妙。

「ウルサイ、海野。俺が一番なんだ。鈴香もなんであんな奴に自分の飲み物渡してるんだ！」

「なんでって…… 意味はないけど？」

「バカッ！ なんかあったらどうするんだ！」

「なにがあるのよ……」

「鈴香、お前自分をもっとよく見ろ。奴がお前に惚れて襲われでもしたら！ あー！！ 俺はどうしたらいいんだ！」

なんでそうなる。って言うか、どうにかしたいのは佐伯、あんたの頭の中だけど。

「なぁ 鈴香。なんかあんた大変やな」

「私もそう思う。」

「どこまで暴走するやろ。」

「イヤな事言わないで。」

今はまだプリンスって仮面を付けてるからいいけど、学校の中でもこうなったら……

いや、今も学校の中なんだけどさ。

「鈴香、とにかくだな。もっと自分を大事にしてだな！ 襲われないように気をつけるんだ！ 俺も気をつけるから！」

その台詞、そっくりそのまま返したい。

私が一番気をつけなきゃならないのは、佐伯。あんたなんだと思う。

「鈴香！ 分かってるのか？！」

「いや、さっぱり？」

どうして分からないんだー！と頭を抱える佐伯を無視。

分からないのは あんたのキャラと頭の中。