04 面白がってるんでしょ?

「志波? あんたD組やったよな?あれ、ヤバイんと違う?」

はるひが見つめる先には、障害として置いてあるハードルを引っかけ、転んでいる男の子。立ち上がって走り出すが 足を引きずっている。

「うわ。かなり痛そう。」

片足を捻ったんだろうか。たいしたことないといいんだけどね。
こういうの見るの苦手なんだよ。
自分まで痛くなる気がして。

ペットボトルの水をグイッと飲むと、転んだ子をジッと見ていた志波が私を見る。

「悪い。水くれ。」

「ん? いいけど…… 私飲んだよ?」

「あぁ。構わない。」

「そう? ならどうぞ?」

「サンキュ。」

ニヤリと笑って口をつける。志波の後ろに見えるのは 口をポカンと開けた佐伯。

―――まさか! 今の笑いって!!

「ちょっと、今のわざとなんでしょ。」

「なんの事だ?」

「見てたの知ってたんでしょ。」

「さあな。ほら、返すサンキュ。」

わざと身体をずらし 見えるようにペットボトルを返してくる。

やっぱり見てる。なんかジッと見てる。

「こんな事やって何が楽しいんだか。子供じゃないんだから止めなさいよ。」

ホント、子供じゃないんだから。いや、まだ充分子供か。こんな意味分からない事やってるんだし。

「楽しいな。かなり。」

「どこが?」

「あぁやって敵意満々なとこ。」

目だけちらっと佐伯に向ける。

敵意? どこが?

私には 情けない顔に見えるんだけど。その捨てられた子犬の目はやめてほしい、私が悪いわけじゃないでしょ。

「なんか分かんないけど、私を巻き込まないでよ。」

はあっと溜め息をつくと 後ろから声がした。

「志波くん。ちょっといい?」

「あぁ、なんだ?」

「さっき借り物競走に出るはずだった子が怪我しちゃって、代わりに出てくれないかな?」

「……わかった。」

「ありがとう。お願いね?」

ホッとした顔の女の子が頭を下げ 忙しそうに走って行く。登録する生徒の変更に行ったのだろう。

「クラスの子?」

「あぁ。委員長。」

「ふーん。ま、頑張って」

「あぁ。行ってくる。」

行ってくる?って事は帰ってくる?……もう帰って来なくていいんだけど。

「志波!頑張りや〜」

「志波くん。応援するからね!」

「あぁ。じゃあな。」

はるひとあかりちゃんはにこやかに手を振って送り出す。この2人の好感度は高いらしい。接触もないのに高い好感度、なぜ?………まぁ 自分にだってそうだけど。

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