18 学生って大変よね

放課後はリレー選手の練習があるらしい。他の競技に出る子達も 希望すれば練習出来るらしく あかりちゃんは居残り。やっぱり主人公は真面目だ。

体育祭までの一週間は短縮だから 少し早めに学校を出られる。せっかくだから 寄り道してお茶でも飲んで帰ろうか。

お茶と言えばコーヒー。コーヒーと言えばアルカード。今日は エスプレッソを頼もう。月曜だから 主人公ちゃんにも葉月珪にも会えないだろうけど それはそれ。

足取りも軽く 森林公園までの道を歩く。

そういえば あそこのマスターって無口。次はテーブル席にしようかと店の扉を開けると なぜか満席だった。やたらとサラリーマンが多い。こんな時間にどうしてサラリーマンが多いんだろう……まるで外国みたいじゃない。仕方なくまたカウンターに座る。

「……いらっしゃいませ。」

やっぱり無口だよ。このジッと見られるのイヤなんだよね。

「あの…… エスプレッソ下さい。」

「かしこまりました。」

くるりと背を向けると ホルダーを取る。そこからの動作は 本当に無駄がなくスピーディーで綺麗。本当にこれがゲームの世界だろうかと感心する。

「お待たせ致しました」

目の前に置かれたカップには綺麗なクレマ。シュガーを一杯入れ軽く混ぜる。すぐに元に戻るクレマを見ながら まず一口。鼻の奥から抜けるようなアロマ。二口目はちょうどいい 苦みと酸味。そして三口目。甘味とカップに残る香り……

信じられない!! これがゲームの世界?!

溶け残った砂糖を口に入れながら ただただ感心と感激。
やっぱり喫茶店巡りは やってみよう。こーいうのは あかりちゃんよりも はるひだよね。コーヒーの美味しい店は知らなくても 店自体は知ってそう。なんたってスイーツ好きだし。

「お客様はコーヒーがお好きですか?」

「へっ?」

鞄の中の財布に気を取られて 目の前に来たの気付かなかった……

「そうですね。まぁ人並みに。」

喋ったよ。このマスター。それも笑顔だ。

「お若いのに飲み方をよく知ってらっしゃるって思って。」

「はぁ…… そうですか?」

まぁ そりゃそうだ。今日は制服だし ごまかしようがない。財布からお金を出してお釣りを受け取る。

「是非 また来て下さい。」

「はぁ…… じゃあ また来ます。」

この間とはまるで違う笑顔のマスターに少しビビりながら店を出る。
この対応の違いはどっかで、でもよく会った事がある……

どこだっけな……?
毎日っていうくらい会ってたはずなんだけど。

家までの帰り道も気になってしかたない。玄関のドアを開けた時 思い出した。

ほぼ毎日行ってた定食屋の親父さんだ!

定食屋なのに こだわりの頑固オヤジ。
ツンデレ具合がそっくり!

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